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神の富と知恵も深さ

説教要旨(7月5日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 11:33-36
牧師 藤盛勇紀

 礼拝は、神の招きの言葉(招詞)を聞くことに始まり、祝福の内に私たちはこの世へと派遣されて行きます。そして、1週間の旅を終えて、主の日の礼拝へと帰って来ます。私たちを生きる者としてくださった方のもとに、帰るべきところに、帰って来るのです。礼拝は「祝福」で終わりますが、私たち人間の側の行為として最後のものは、祝福の前の「頌栄」です。父・子・聖霊なる唯一の神を、ただほめたたえるのです。
 この11章最後の言葉もまさに頌栄です。「すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっているのです。栄光が神に永遠にありますように、アーメン。」神の御言葉によって招かれ、神の愛と憐れみの内に罪を赦され、神の豊かさに与り、信仰を養われ、改めて祝福で満たされていることを知って、自らをお献げします。そして、この神の豊かさ、深さ、大きさのなかで、ただ神をほめたたえるのです。
 この「頌栄」に至って、私たちはただ神を見ているので、他の一切のもは背後に退いて行きます。礼拝に来るまで、あるいは礼拝の最中でさえ、私たちの魂には様々な思いがうごめいています。不安や心配事や楽しみ事や人の事、自分の事や願い事。しかし、頌栄を歌うとき、もはや自分の願いさえ退きます。「なんでこんな事に悩んでいたんだろう」と、不思議と自分にこだわることも終わっています。それで、頌栄は人間の最高で最後の行為だとも言われます。
 パウロもそういう思いに至っています。9章からずっと壮大なテーマについて語ってきて、この11章で終わるわけですが、高い頂から壮大なパノラマを見て、息が詰まるような感動で溜息を漏らすように言うのです。「ああ、神の富と知恵と知識のなんと深いことか。だれが、神の定めを究め尽くし、神の道を理解し尽くせよう」。
 この最初の言葉は感嘆の声です。圧倒的な大自然を目の前にした時も「おお」と思わず声が漏れます。まして、万物を造り存在させたお方を目の前に仰いだら、どうでしょう。ちっぽけな自分の悩みや不安や思い煩いなど、一切が背後に退いて行きます。
 「ああ、神の富と知恵と知識のなんと深いことか」。この深さは、山頂から地上を見渡すような深さ、澄み切った青空を高く見上げた時の思いのような、吸い込まれるような広さ深さです。ただ感嘆するばかりですが、私たちはこの「神の知恵と知識」が分からないわけではありません。むしろ、「神の知恵と知識の深さ」に自ら触れ、知って、見て、味わうから、感動するのです。
 「知恵と知識の宝はすべて、キリストにあります」(コロサイ2:3)。キリストの内に、神の富と知恵と知識の深さがあり、私たちを豊かにする「宝」がります。だからキリストには全てがあり、キリストは全てを豊かにたたえて満たすお方です。私たちはこの方に結ばれ、この方のものとされて、自分にがんじがらめになる愚かな縄目から解放されるのです。
 パウロは、「いったいだれが主の心を知っていたであろうか。だれが主の相談相手であっただろうか」と言います。人間は歴史に翻弄され、様々な出来事に悩まされ、将来も見通すことはできません。しかしその混乱を貫くように、いや、人間の失敗や戸惑いや混乱さえ用いて、神は導いておられます。信仰はそれを見る、見えない現実を見ます。だから真に希望を抱くのです。
 私たちはキリストに結ばれて、神の知恵と知識の深さと宝にあずかりました。25節で言われたあの「秘められた計画」すなわち「奥義」です。誰にでも開かれ与えられたこの奥義は、神による広い世界です。この奥義から見える新しい真理、命、道。そこに立つ者は、「すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっているのです」とほめたたえることから、新しい生活を開始するのです。

説教一覧(2020年度)

2020.4.5
初めであり終わりである方
2020.4.12
主の言葉を思い出せ
2020.4.19
主を知って生きる
2020.4.26
どんな時も主を仰ぎ
2020.5.3
美しい足
2020.5.10
祭司の務め
2020.5.17
キリストの言葉を聞く
2020.5.24
私も日本人ですが
2020.5.31
永遠にあなた方と共に
2020.6.7
彼らの罪が世の富に
2020.6.14
新たに生まれる
2020.6.21
野生のオリーブ
2020.6.28
秘められた計画を知る
2020.7.5
神の富と知恵も深さ
2020.7.12
新しい時代のはじまり
2020.7.20
この世に倣わず
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信仰の度合いに応じて
2020.8.2
縦の愛、横の愛
2020.8.9
命のパンをいただく
2020.8.16
平和へのもう一歩
2020.8.23
自由の由来
2020.8.30
今という時を知る
2020.9.6
生きるにしても死ぬにしても
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神の国は義と平和と喜び
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2020.9.27
敗北から
2020.10.4
希望の源
2020.10.11 朝礼拝
わたしがここにおります
2020.10.11 夕礼拝
門は開かれた
2020.10.18
私を用いて働く主
2020.10.25
終わりを目指して
2020.11.1
旅立つ者として生きる
2020.11.8
ふさわしい実を結べ
2020.11.15
主にある挨拶
2020.11.22
平和の源である神
2020.11.29
あなたを強める神
2020.12.6
慈愛に満ちた神
2020.12.13
神の御前に立つ者
2020.12.20
暗闇を照らす光
2020.12.27
神に希望をかける者
2021.1.3
私たちの誇り
2021.1.10
生き返り、見つかった
2021.1.17
『否』でなく『然り』のみ
2021.1.24
行き違いを越えて
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2021.2.7
勝利の行進
2021.2.14
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2021.2.21
あなた方はキリストの手紙
2021.2.28
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2021.3.7
顔の覆いを取り除け
2021.3.14
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2021.3.21
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2021.3.28
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