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暗闇を照らす光

説教要旨(12月20日 クリスマス礼拝より)
ルカによる福音書 2:1-20
牧師 藤盛勇紀

 皇帝の勅令により、人々は皆故郷に帰って登録しなければならない。マリアのお腹はすでに臨月。なんでこんな時に。巨大な権力に翻弄される哀れな夫婦。やはりマリアは産気づいてしまいました。宿屋には空きがなく、暗い家畜小屋での初産。こうして救い主は飼い葉桶に寝かされました。なんとも暗く情けない出産、誕生でした。
 マリアとヨセフは、生まれる子が「いと高き方神の子」と呼ばれ、民を罪から救うというお告げを受けていました。でも、こんな貧しい家の子が、どのように民を救うのか、全く見当も付きません。ただ不思議な出来事に驚き、思い巡らすだけでした。
 この夜、救い主誕生の知らせを最初に聞いたのは、野宿して羊の群れの番をしていた貧しい羊飼いたちでした。今日の聖書の直前に、救い主誕生を預言した言葉があります。「これは我らの神の憐れみの心による。この憐れみによって、高い所からあけぼのの光が我らを訪れ、暗闇と死の陰に座している者たちを照らし、我らの歩みを平和の道に導く」。この「暗闇と死の陰に座している者たち」とは誰のことでしょうか。当時のイスラエルの民? たしかにそうでしょう。何百年も昔に王国は滅び、ローマ帝国に支配される小民族。主なる神を信じる民だが神の言葉を告げてくれる預言者も絶えて久しい。「救い主が来る」との期待を持ちならも、この時代を見ればその気配もない。
 この暗さは、私たちが生きる現代もそうでしょう。世界中が暗い、この暗さに耐えきれずに生きることを断念する人々が後を絶ちません。「コロナ後」も、希望が持てるとは言い難い。「暗闇と死の陰に座している者たち」とは、私たち自身でもあります。仮に今の世界が明るかったとしても、私たち自身の内側に、闇としか言えない何かがあるからです。この一年を振り返って、「一点の曇りも陰りもなかった」などと言う人は皆無でしょう。恥ずかしいことがあり、愚かだったと思わされる経験があり、惨いことを言ったりしたりした。忘れたくても死ぬまで忘れられない恐ろしい闇がある。
 こんな暗闇や死の陰の恐れは、私の存在を最も深いところで支えているもの、私の人生に意味を与えているものとのつながりさえ切れている恐れ、「神と断絶したまま」生きて死ぬ恐ろしさでしょう。
 羊飼は、いつも羊と一緒でした。街に住む人々のように安息日には会堂に行って礼拝を献げたり、神の言葉を聞くという機会もない。彼らもアブラハムの子孫・イスラエルの民。でもそんな自覚さえ持てない。自分たちは神に相応しくない、神の恵みや祝福など関係ない。「どうせ俺たちは」と自分を卑下していたかもしれないし、実際人々から蔑まれていました。そんな「暗闇と死の陰に座している」自分を、どうして喜べるでしょうか? どうして生きる価値があると思えるでしょうか?
 しかし、そんな彼らに、救い主誕生の知らせが真っ先に届けられたのです。天使は「恐れるな」と告げます。「あなたがたのために、救い主がお生まれになった」と。暗さの中に座し、何の光明も見出せずに佇む「あなたがたのため」なのだと。
 救い主の到来は、神の憐れみの光です。神ご自身が「恐れるな」と言われます。神はあなたから離れているのではない、あなたから遠いのではない、あなたと共におられるのだ。だから、恐れるな!
 私たちの救い主なる神は、貧しい人となってまで私たちと共にいてくださる神です。この方が到来し、その真実が告げ知らされ、それに応えるのがクリスマスです。思いもしない知らせを受けた羊飼いたちは、「へえ、そんなこともあるのか」と留まったのでなく、「ベツレヘムへ行こう」「その出来事を見ようではないか」と言って、実際に行って、見たのです。良き知らせを聞いて、応答した者だけが、神の真実を知るのです。
 

説教一覧(2020年度)

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2020.12.6
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2020.12.27
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