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あなた方はキリストの手紙

説教要旨(2月21日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 3:1-3
牧師 藤盛勇紀

 コリント教会は様々な問題を抱えていましたが、彼らを混乱させていた原因の一つは、いわゆる偽教師・偽使徒と言われる人々の存在です。偽教師といっても、立派な推薦状を書いてもらえる人々でしたし、彼らを推薦してくれる人の権威を笠に着て誇っていました。彼らは、イエス様の直弟子のペトロやヨハネといった使徒たちから直接教えを受けたとも思われます。その点パウロとは少々経歴が違います。パウロも一流の学識のある人格者でしたが、決定的な汚点がありました。キリスト者を迫害し殺したという事実です。パウロはキリスト者となり、伝道者ともなりますが、その際に主な使徒たちの指導を受けることもありませんでした。パウロが「使徒」だというのは「自称」ではないかと疑われたのです。
 偽教師たちは、パウロなどとは違って、使徒たちから教えを受け、エルサレム教会の推薦さえあると誇っていました。それは事実でしょう。しかし、そうした人々の権威を誇りとしながら、本当に権威あるお方のことが分からなくなってしまったのです。そして教会の人々をも同じ混乱や思い違いの中に引きずり込んでいました。
 誇るべきものなら誰よりも多くを持っていたパウロですが、キリスト者となってからは、自分は「教会の迫害者、罪人の頭」だと公言しました。しかし、そんな自分に卑屈になったり劣等感に陥ったりしません。それどころか、自分の拠り所、自分の誇はこれだと、神への信頼を語るのです。10章でこう言います。「わたしたちは、自己推薦する者たちと自分を同列に置いたり、比較したりしようなどとは思いません。彼らは仲間どうして評価し合い、比較し合っていますが、愚かなことです」。他の人と比べて、自分はこんな立派な指導者の薫陶を受けたとか、その推薦を受けたと言って誇り、得意になっている。それは《愚かなこと》だ。なぜなら、神は、私たちが獲得した力や権威や誇りによって私たちをお用いになるようなお方ではないからです。神の敵対者であったこんな私を神は選び、赦し、生かし、用いてくださっている、だからパウロは、「誇る者は主を誇れ」(10:17)と言うのです。
 そして「わたしたちの推薦状は、あなたがた自身です」と言います。人の推薦や評価は要らない。コリントに教会が存在している事実は、神が教会の迫害者であった自分を用いて働いてくださったことの印だからです。パウロは神から喜ばれることだけを求めました。偽教師たちの唆しによってコリントの信徒たちから誤解され軽蔑され、悪口をたたかれ見捨てられつつありました。にもかかわらず、なお神は自分と共に歩んで下さっている。それが彼の喜びでした。
 人が自分をどう見ようと、生ける神の恵みの言葉が、自分の心にいつも響いている。だからパウロには常に恵みが十分だったのです。パウロ自身の心に神ご自身が記してくださる推薦状があるから、他の人によって記される必要もありませんでした。
 パウロは、「あなたがたはキリストがお書きになった手紙」だと言います。パウロたちを用いて《キリストが書いた手紙》なのだと。しかも「すべての人々」への手紙として「公にされている」と言います。
 私たちもキリストの手紙です。何が書かれているのか。神がどれほど私たちを愛し、深く赦し、大切に生かし用いて下さっているか。それは、私たちのためにキリストが献げられたことから分かります。キリストの恵みを表現する「キリストの手紙」であり「神の作品」(エフェソ2:1)です。
 「いや、私なんか」などと思わないでください。あのやっかいなコリントの信徒たちも「キリストの手紙」です。パウロ自身、自分のことを「月足らずで生まれたような(出来損ないの)わたし」と言いました。かなりキツい言葉ですが、「できそこない」だからこそ、神が成してくださるのです。
  

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