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信仰の度合いに応じて

説教要旨(7月26日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 12:3-8
牧師 藤盛勇紀

 福音の恵みを語ってきたパウロは、この12章に入ってから、福音を信じた者がどう生きるかという問題に視点を移します。そして、「わたしに与えられた恵みによって、あなたがた一人一人に言います。自分を過大に評価してはなりません。むしろ、神が各自に分け与えてくださった信仰の度合いに応じて慎み深く評価すべきです」と勧めます。最初の具体的な勧めにしては、少々消極的な印象を受けます。
 「上にあるものを求めなさい」(コロサイ3:1)。私たちはまず上を仰ぎ、上なるお方との関係で自分を知り、世界を知ります。そこで改めて、「すでに恵まれている私」を発見します。そして私が置かれているこの世界は、混乱や不安や悲惨に満ちているように見えても、実は祝福のもとにある世界だった。これは信仰によって開かれます。
 信仰は、私たちがキリストと結ばれている事実そのものです。キリストと結ばれ、キリストから全てをいただいているので、自分を見失うことはありません。あてども無い自分探しに出て行く必要もありません。キリストはアルファでありオメガ、原点であり同時に終わり・目標でもある方ですから、この方から人生の行方も生き方も行くべき方向も示されてきます。
 この恵みの中でパウロは、「信仰の《度合い》に応じて」と言います。イエス様は、「からし種一粒ほどの信仰があれば」と言いました。つまり信仰は「あるかないか」、量ではなく質という面があります。しかしここでは、量的な面、程度の違いを見ています。口語訳では「信仰の量り」。信仰には「あるかないか」という面があると同時に、その信仰によってこの地上を生きる時には、「度合い」や「程度」の違い、あるいは「深まり」ということがあるのです。
 信仰の《ある・なし》は決定的ですが、信仰の程度・度合によって、人生も世界も別様に現れ出ます。信仰は、生ける神、生けるキリストとの交わりですから、決して硬直化したものではありませんし、単純な図式化もできません。2次元の平板な絵より、立体的でダイナミックな動画的です。神との縦の交わりは不動の軸であっても、それを私たちの人生や世界、横方向に延べたら、広がりや深まりがあり、度合いや程度、成長の違いということが現れ出て、新しい生き方を生み出して行くのです。
 パウロはその「信仰の度合い」を、自分を「慎み深く評価する」ことと結びつけます。「慎み深い」とは、消極的なことではなく、「賢い」「思慮深い」といったことです(⇒マタイ25章「賢いおとめたち」)。
 信仰によって自分を知り、自分自身をわきまえ、そこから自分が今なすべきことを知っていく、ということです。だから「自分を過大に評価しない」のです。自分を過大に評価するのは、自分が何者かを知らず、自分の位置も自分の役割も分からないからです。とりあえず大きくありたい、見せたいと、あくせくし背伸びしてしまうのです。
 4節以下は、キリストの「体」(=教会)のたとえが記されています。「自分を慎み深く評価する」賢さは、自分が結ばれたキリストの体において、自分を捉えます(1コリント12章)。それは他者の存在もキリストとの関係で認めることです。「目が手に向かって、お前は要らない」とは言えない。私たちは互いにキリストの「体」とされている。それが慎み深さ・思慮深さです。
 行く先の見えない現代世界のただ中で、教会がひたすらキリストを指し示していることは重大です。世の人々は、自分と世界の行方を探し回っていますが、結局分からないまま時間切れを迎えてしまいます。しかしキリスト者は、自分はキリストのものとされ、神の子であると知り、キリストの体でありキリストの花嫁だと知っています。この真実によって慎み深く、思慮深く、賢く、喜んで生きるよう導かれているのです。
 

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