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水と霊とによって生まれる

説教要旨( 5月15日 )
エゼキエル書 第36章25~28節
ヨハネによる福音書 第2章23~第3章15節
倉橋康夫

 ヨハネ福音書の第2章23~25節で、主イエスがしるしを行われ、それを見た多くの人が主イエスを信じた、とされています。そのしるしが、具体的にどのようなものであったかは分かりませんが、少なくとも、人々を驚かせ、感心させるようなものであったことは確かです。そのことについて、<24 しかし、イエス御自身は彼らを信用されなかった。・・・>、と記されています。ここには、主イエスの厳しい姿勢があります。自分たちの求めるようなしるしを根拠に、自分たちの流儀で、信じるというあり方は、主イエスによって拒否されるのです。
 扨て、そこで、イスラエルの民の指導者の1人である、ファリサイ派のニコデモの話へと移ります。彼は、<ある夜>主イエスの所に訪れます。夜、人目を忍んで来たのです。ニコデモ自身が言うように、主イエスのなさったしるしを見て信じた者の1人です。しかしながら、そのニコデモに対して、主イエスは、「新しく生まれる」ということについて、問いかけられます。<3 イエスは答えて言われた。「はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない。」>、と。
 「はっきり言っておく」とは、厳かに宣言するかのように告げる時の、主イエスの言い方です。神の国を見るためには、新しく生まれなければならない。自分の望むようなしるしを求め、それによって、自分流儀に信じていても、神の国を見ることにはならない。人間がその根底から変えられること・「実存の変革」なしに、神の国・神のご支配を見出すことはできない、と言うのです。
 そして更に、再び厳かに宣言するかのように言われます。<5 イエスはお答えになった。「はっきり言っておく。だれでも水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない。>、と。ここでは、神の国に入ると言われ、「水と霊とによって生まれる」と言い換えられます。明らかに、洗礼を示唆しています。水が象徴的に用いられる洗礼は、単に水だけによる儀式ではなく、霊・聖霊の働きが同時に起こる奇跡的な出来事なのです。単に、人間の側の決心・決意に留まるものではなく、神のみ業が行われるのです。
 併せて読んだ旧約聖書は、エゼキエル書 第36章です。主なる神が「水と霊とによって」イスラエルの民を清め、また民に<新しい心>を与え、民の中に<新しい霊>を置く、という約束が告げられています。ここに、洗礼によってもたらされる事態と同じことが示されています。
 主イエスは、ニコデモに対して、水と霊とによる洗礼を受けて、人は神の国に入る・移される、と言われます。密かに、主イエスに敬服し、主イエスを信頼するとしても、それだけでは、本質的には何も変わらないのです。この頃のニコデモのあり方は、そのようなものでしかありませんでした。主イエスは、密かに信じる者から、公然と信仰を告白し、水と霊とによる生の変革が与えられ、自分が究極的に帰属するところを見据えて生きる者になるように、と招かれるのです。
 主イエスは、<8 風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来て、どこへ行くかを知らない。霊から生まれた者も皆そのとおりである。」>、と言われます。主イエスは、風に譬えて、聖霊の働きを指し示されます。聖霊の自由な働きに身を委ねて、この地上の事柄に支配されない、ゆったりとした、ゆとりを持った歩みが、神の国に移された者の生き方である、と言うのです。それが、<霊から生まれた者も皆そのとおりである>、と言われる真意なのです。このように、主イエスは「水と霊とによって生まれる」ことの素晴らしさを明らかにされます。私たちは、この恵みの中に生かされているのです。
 

説教一覧(2011年度)

2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
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2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
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2011.06.19
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2011.07.10
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2011.07.24
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2011.07.31
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2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
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2011.08.21
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2011.08.28
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2011.09.04
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2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
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2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
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2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
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2012.01.15
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わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定