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命の恵みを共に受け継ぐ

説教要旨(8月7日)
創世記 第2章18-24節
ペトロの手紙一 第3章1-7節
上田容功

 ペトロの手紙が書かれた当時の社会において、妻は夫の所有物のように考えられていたようです。女性は、社会において十分な権利も与えられず、また家庭においても夫に服従するという立場に置かれていました。家では夫の信仰に従うのが当時の慣習でした。夫とは別の信仰を持つことが許されない中、教会の婦人たちが、御言葉を信じない夫の前で、信仰を公に言い表すことは勇気がいることだったと思うのです。
 そのような婦人たちに対して、ペトロの手紙は、信仰を貫くために良き妻であり続けるように励まします。神が結び合わせてくださった自分の夫に仕えなさい、と語るのです。キリスト者である妻たちの夫への服従の中に、夫が信仰に導かれるようになる、という積極的な意味を見出します。直接的に福音を語れない中で、純真な生活に励むように勧めるのです。妻たちの無言の行い。それは、振舞いによる福音の証しです。日常のさりげない心配りや微笑み、恵みに満ちた言葉が信仰的な意味を持ちます。証しの方法は様々です。言葉による証しだけではなく、身をもって証しすることもあります。存在のすべてを注ぎ出し、身をもって証しをなすとき、御言葉を信じない人にも福音が伝わっていくのではないでしょうか。身をもってなされる証しとは、ペトロの手紙では、神を畏れる生活です。十字架の恵みに感謝し、永遠の命の希望に生かされているという喜びの生活です。救いの喜びに満たされた姿を見て、一緒に生活している自分の夫がキリスト教信仰に導かれるようになるのだから、あなたの希望の源であるキリストを自分の夫にも紹介しなさい、とペトロの手紙は励ますのです。
 7節の夫たちへの勧めは、妻たちへの勧めに比べると非常に簡潔です。しかし、この手紙が書かれた時代、主従関係が社会や家庭に浸透していたことを考えたとき、妻たちへの勧めだけでなく、夫たちへの勧めもなされていることは新鮮なことでした。
 具体的には、妻を身体的に弱い存在として受け止め、社会的にも低い立場にあることにも配慮して共に生活しなさい、と勧められています。さらに、「命の恵みを共に受け継ぐ者として」妻を尊敬しなさいと言われています。「命の恵み」とは「永遠の命の恵み」のことです。終わりの日にもたらされる救いです。
 ここで大切なことは「共に」ということです。「生活を共にし」「命の恵みを共に受け継ぐ」。妻と夫との間の関係は、どちらか一方にだけに義務や責任を押し付けるのではなく、神の御前にあって相互的です。十字架の恵みによって、共に生かされている協力的な存在です。このことを「人は独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう」(創世記2:18)という御言葉は意味しています。女が男のあばら骨から造られたことが記されている創世記第2章18~24節には、夫と妻は、親しい関係の中にあって、互いの相違を認め合い、責任的に関わる存在であるということが述べられています。
 救いの恵みを共に受け継ぐ、という神によって与えられる希望に導かれて歩むとき、私たちは互いに仕え合い尊敬することができるのではないでしょうか。夫と妻の二人だけだと、どうしてもお互いに見つめ合ってしまい閉鎖的になるものです。終りの日における救いという共通の希望に導かれるとき、二人が見つめ合うのではなく、一つの方向を見て、神の国を目指して共に前進するのです。私たちを生かすために、主は十字架においてご自身の命を捧げ尽くされました。私たちに永遠の命の希望を与えるために、自らを犠牲にしてまでも私たちを愛し抜かれたキリストの愛に支えられています。神の栄光のために、キリストが私たちを受け入れてくださったように、互いに受け入れ共に歩んで参りたいと思います。
 

説教一覧(2011年度)

2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
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2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
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神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
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わたしについて来なさい
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主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定