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新しく生まれた人間

説教要旨(8月20日 朝礼拝より)
ガラテヤの信徒への手紙 2:15-21
牧師 藤盛勇紀

 「わたしは、キリストと共に十字架につけられています」とパウロは言います。何か犯罪を犯したわけではありませんし、イエス様が十字架につけられたあの場にもいなかった。しかしパウロは、キリストの十字架を本当に見つめている人の一人です。
 イエス様の十字架のもとには、様々な人がいました。イエスを妬み、憎み、侮辱した多くのユダヤ人たち。イエスが何者なのか、そんなことに関心の無いローマの兵士たち。イエス様にずっと従って来ていた人々。過越の祭ということで、世界中から集まって来ていた群衆。一方、昨日まで主イエスに従い、何年も共に伝道してきた弟子たちは、主イエスが逮捕されると、とっとと逃げ去って姿をくらましてしまいました。
 こうした人間の罪の結果としての死を、あのお方が引き受けてしまわれたのです。そして、この主の十字架のもとから逃げ出した裏切り者たちが、誰よりも深く十字架を見つめることになりました。
 パウロも、かつてはキリスト者に対する強烈な迫害者でした。十字架につけられた男を神の子だとか救い主だと言う、そんなたわ言は許せない。あんな者を信じるキリスト者は根絶やしにする。鼻息荒く道を急いでいたその時、突然、「サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか」と、生きておられるイエスの声を聞いたのです。
 信仰的潔癖症のかつてのパウロにとって、汚らわしい存在のイエスは今や、「わたしを愛し、わたしのために身を献げられた神の子」です。パウロの内にはもはやこのお方しかいません。《私のために身を献げ、血を流されたイエスが、私の内に生きてくださっている、イエスが今、この私を生きてくださっている》というのです。
 パウロは言います、「人は律法の実行ではなく、ただイエス・キリストへの信仰によって義とされると知って、わたしたちもキリスト・イエスを信じました」。神の義は、《私たちの正しさ》とか《私たちが何をした》など、全く関係ありません。神の義は、人間の正義や自分の正しい行いなどからイメージされるような「義」とは全く違って、罪人のためにご自分を献げてしまうという、《神の》憐れみとしての「義」なのです。
 人間の間では、悪人のために善人を犠牲とするなど、あってはなりません。しかし神は、私たちのためにそれをしてしまわれたのです。「神の義」とは、この《神の》憐れみ、《神の》愛、《神の》真実です。だからこの《神の》義が、私たちの救いなのです。
 義でない私たちを義としてくださるお方が、私たちの内に生きておられます。十字架に死んで復活されたキリストによって、実は人類は新しくされているのです。私たちも新しい人間とされています。しかしこの真理、この現実は、ただ信じること、つまりただいただく真理であり現実です。
 「生きているのはもはやわたしではありません」。私たちは、自分の何かによらずに、新しい自分と新しい命をいただくのです。復活して天におられるキリストは、いま霊において私たちの内におられます。だから、私たちは主の御心と御業をこの地で現すのです。私たちはすでに、新しい命に生かされていて、すでに平安を得ています。それに気づくのが信仰です。
 キリストは、すでにあなたのために死んでくださいました。そして、あなたのために生きていてくださいます。その命をいただきますか? それとも、自分の力で頑張って、何か獲得してみますか? 自分を握っていた手を放して、主からいただくとき、「生きているのはもはやわたしではありません」という新しい命を知るのです。それが神の子らです。それが世界の希望なのです。世界はうめいています。パウロがローマ書8章で言うように、全被造物はうめきながら、新しく生まれた神の子らの登場を待っているのです。
 

説教一覧(2017年度)

2017.4.2
信仰への一歩
2017.4.9
主がお入り用なのです
2017.4.16
信仰の目が開かれた
2017.4.23
主は生きておられる
2017.4.30
見えるようになれ
2017.5.7
主と共なる食事
2017.5.14
命の声を聞き分ける
2017.5.21
心の目が開かれて
2017.5.28
人によらず、神により
2017.6.4
真理の霊が来る
2017.6.11
神の子らよ、生きよ
2017.6.18
今日、必要なもの
2017.6.25
虫の良すぎる話
2017.7.2
神による回心
2017.7.9
離散している人たち
2017.7.16
恵みの伝統
2017.7.23
まっすぐで自由な道
2017.7.30
歌いつつ死んでゆく
2017.8.6
私の内のキリスト
2017.8.13
信仰に賭ける
2017.8.20
新しく生まれた人間
2017.8.27
描き出された十字架
2017.9.3
祝福あれ
2017.9.10
凪になる
2017.9.17
約束は信じる人に
2017.9.24
あなたがたは神の子
2017.10.1
目に見えないヴィジョン
2017.10.8
一粒の麦が地に落ち
2017.10.15
神の相続人
2017.10.22
神を知る時
2017.10.29
いささかも疑わずに
2017.11.5
神の賜る命
2017.11.12
父と家
2017.11.19
イエス・キリストの名によって
2017.11.26
あなたがたは今は神の民
2017.12.3
キリストが形づくられる
2017.12.10
油を用意して待て
2017.12.17
喜べ、自由な者よ
2017.12.24
神はあなたの味方
2017.12.31
遠くまで、響かせて
2018.1.7
キリスト者の自由
2018.1.14
貧しさと豊かさと
2018.1.21
人生を導く霊
2018.1.28
重荷を軽やかに
2018.2.4
十字架による新創造
2018.2.11
恵みと平和の計画
2018.2.18
あなたは何を望むのか
2018.2.25
満ちている祝福
2018.3.4
開かれた奥義
2018.3.11
試練か誘惑か
2018.3.18
神の国の手付金
2018.3.25
心の目が開かれて