あなたがたは神の子

説教要旨（9月24日 朝礼拝より）
ガラテヤの信徒への手紙 3:21-29
牧師 藤盛勇紀

　「信仰が現れる」「信仰が現れた」とあります(23,26節)。「現れる」とは、「来る」という単純な言葉です。つまり、信仰は向こうから、私たちの外から「来た」のだというのです。信仰が来たことによって、何が起こったのでしょうか。パウロは、また律法のことを語ります。律法は「わたしたちをキリストのもとへ導く養育係」であり、キリストを信じる者にとっては、養育係としての律法の役割は終わったのだと。
　「律法」とは、神の戒めや種々の掟のことですが、ある生き方をも象徴しています。それは、自分の知恵や力や態度や行いによって神に認められる、そのようなことを求め、期待する生き方です。
　パウロもこの律法によって生きる道を誰よりも熱心に追い求めて、自己を鍛え整え、正しい行いを積み上げ、正しくない者を裁き、キリスト者を迫害していました。ところが、パウロ自身キリストに出会って、その道が完全に方向転換させられました。
　主イエスは生きておられた。そしてこのような私を主のものとしてくださり、私を生きてくださっている。パウロ自身思いもしなかったキリストの《到来》によって、パウロに《信仰が現れた》のです。信仰はこれほど素晴らしいことだったのか。これほどにも親しい神の交わり、これほど甘美で、嬉しく喜ばしく、力に満ち、栄光に満ちたことだったのか。ガチガチの信仰者パウロが想像さえしなかった《信仰》が来た。そして、パウロは解き放たれたのです。
　「あなたがたは皆、信仰により、キリスト・イエスに結ばれて神の子なのです」。これは目に見える事実ではありません。しかし、その確かさは、「洗礼を受けている」という事実に現されています。洗礼によってキリストに結ばれたことを、パウロは「キリストを着ている」と言います。キリストを着たことによって、あなたがたは神の子なのだと。
　キリストを着た神の子の生き方は、自分の内に何を持っているか、何があるか、何ができたかは問題ではありません。あるいは、他人が自分のことをどう見て、どう言い、どう思うかも問題ではありません。「あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つ」だからです。
　「キリストにおいて一つ」とは、私たち一人ひとりの個性や人格が、ぐちゃっと丸められて一つにされることではありません。私がキリストに結ばれているように、あなたもキリストと結ばれていること。そして、キリストにある神の愛から、もう何者も私たちを引き離すことはできない、という事実です。
　「もはやユダヤ人もギリシア人もない、奴隷も自由な身分のものもなく、男も女もない」とパウロは言います。人間を引き裂く具体的な分裂が挙げられています。それらの違いや対立が、確かに社会に存在します。しかし、その分裂によっても、神の子とされた者たちは引き裂かれはしない、ということです。
　キリストを着ているからといって、クリスチャンは皆同じように見えるというわけではありません。一人ひとりは実に様々、見た目も様々で、むしろ違う所が目に付くかもしれません。それでも、キリストにつながれているのです。律法を根拠とする生き方は、人間同士の力の違いや格の違いを生み、分裂を生みます。しかし、洗礼は私たちを一つにします。
　「どうせ人間はバラバラ、最後は自分だけ」と思われた人生に、違う道が見えます。「自分の力を失ったら立つ瀬がない」と思われた人生に、違う所に真に立つべき場があることが分かってきます。自分を手放し、自分を献げて、仕えていく、そうした道が俄然意味を持ってきます。この、キリストを着る新しい人生に、全ての人が招かれているのです。