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キリスト者の自由

説教要旨(1月7日 朝礼拝より)
ガラテヤの信徒への手紙 5:2-15
牧師 藤盛勇紀

 キリストの恵みと自由に与ったのに、不自由な生き方、律法の奴隷に留まっている。パウロは厳しく指摘し、律法に基づく「割礼」を問題にします。パウロはもともと、割礼については場合によっては受けさせる自由を持っていました。ただここでは、割礼(律法)は結局、「キリストとは縁もゆかりもない者」としてしまう、いただいた恵みさえ失うのだ、とさえ言います。
 なぜそこまで割礼が大問題なのでしょうか。それは、救いと結び付けて考えられてしまっているからです。キリストと結ばれ、新しい命が与えられ、神の子とされている。なのに、もっと何かを行って救いを確かにしたい、確かな何かを身に帯びたいと思う。あるいは、「これをしなかったら救われたとは言えない」と、救いの条件のように考えてしまう。それが律法主義となります。
 そうした思いは、キリストの十字架の恵みを忘れさせてしまいます。それが「つまずき」です。人は、つまずかせるものに腹を立て、蹴飛ばしたくなります。つまずかせる人がいれば赦すことができず、赦しの神に我慢ならなくなります。つまずいた人は、結局十字架につまずき、神を蹴飛ばすのです。それがつまずきの恐ろしさです。
 すると、救いの確かさを何か他のものに求めざるを得なくなります。人間は誰でも正しさを求め、信仰者は信仰者らしい正しさや神の前での正しさを求めますが、その正しさを自分の中に見出そうとする心が、自分をつまずかせることになるのです。
 だからパウロは言います、「義とされた者の希望」は、神の「霊」により、「信仰」によるのだと。私たち自身の内にどれほど正しさを求め、救いの確かさを求めても、私たちは自分を正すこともできなければ、自分を生かすこともできません。しかし、そのような私たちが生きるために、神の独り子は人となり、罪人として死んでくださって、私たちは赦され霊的に新しく生まれたではないかと、パウロは言います。だから、神ご自身が成して下さる御業と、神が与えて下さる言葉に希望をもって、自らを委ねる。それが「信仰」ではなかったかと。
 だから割礼の有無、つまり人間の行為は問題ではない、「愛の実践を伴う信仰こそ大切です」と言います。これは微妙な訳で、愛において働く「信仰だ」というのです。14節に「隣人を愛せよ」の戒めが出てきますが、これは「自分を愛するように」が前提です。「自分を愛する」とは自明のことではなく、自分自身が受け入れられない人、自分と折り合いがつかない人がいます。「私はこれをしなれば、私もああでなければ」と、いつまでも自分になれず、いつまでも自分探しをする。自分を失っているのです。
 「隣人を愛しなさい」を、神の言葉として聞くのであれば、その前提として、聞いている自分が、語っておられる神ご自身から愛されていることに気づくことです。そうでなければ、「隣人を愛さなければ」「隣人愛を実践しなければ」「キリスト者はこうでなければ」と、神の戒めがその人を縛り、不自由にするだけです。
 まず、あなた自身が何者であるか、どれほど価値ある者であるかを知ることです。「空の鳥を見なさい、野の花を見なさい、神はあれほどに養い装って下さっているではないか」と主イエスは言われました。そして「あなたがたにはなおさらなのだ」と。
 この神の愛とキリストの恵みの内で、私たちは自分を愛し、自分に自信を持ち、キリストと共に他者に仕えていこうとする自由を得るのです。
 「キリスト・イエスに結ばれていれば」、割礼など問題ではありません。「ああでなくてはならない、こうでなければ」と、こわごわ半身になって生きる必要はありません。キリストに結ばれること以外に、どうしても必要などというものは、一切何もありません。そこに、自由に生きる道があります。
 

説教一覧(2017年度)

2017.4.2
信仰への一歩
2017.4.9
主がお入り用なのです
2017.4.16
信仰の目が開かれた
2017.4.23
主は生きておられる
2017.4.30
見えるようになれ
2017.5.7
主と共なる食事
2017.5.14
命の声を聞き分ける
2017.5.21
心の目が開かれて
2017.5.28
人によらず、神により
2017.6.4
真理の霊が来る
2017.6.11
神の子らよ、生きよ
2017.6.18
今日、必要なもの
2017.6.25
虫の良すぎる話
2017.7.2
神による回心
2017.7.9
離散している人たち
2017.7.16
恵みの伝統
2017.7.23
まっすぐで自由な道
2017.7.30
歌いつつ死んでゆく
2017.8.6
私の内のキリスト
2017.8.13
信仰に賭ける
2017.8.20
新しく生まれた人間
2017.8.27
描き出された十字架
2017.9.3
祝福あれ
2017.9.10
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2017.9.17
約束は信じる人に
2017.9.24
あなたがたは神の子
2017.10.1
目に見えないヴィジョン
2017.10.8
一粒の麦が地に落ち
2017.10.15
神の相続人
2017.10.22
神を知る時
2017.10.29
いささかも疑わずに
2017.11.5
神の賜る命
2017.11.12
父と家
2017.11.19
イエス・キリストの名によって
2017.11.26
あなたがたは今は神の民
2017.12.3
キリストが形づくられる
2017.12.10
油を用意して待て
2017.12.17
喜べ、自由な者よ
2017.12.24
神はあなたの味方
2017.12.31
遠くまで、響かせて
2018.1.7
キリスト者の自由
2018.1.14
貧しさと豊かさと
2018.1.21
人生を導く霊
2018.1.28
重荷を軽やかに
2018.2.4
十字架による新創造
2018.2.11
恵みと平和の計画
2018.2.18
あなたは何を望むのか
2018.2.25
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2018.3.4
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2018.3.11
試練か誘惑か
2018.3.18
神の国の手付金
2018.3.25
心の目が開かれて