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神が味方ならば

説教要旨(1月5日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 8:31-34
牧師 藤盛勇紀

 「生者必滅、会者定離」という言葉があります。仏教的な表現ですが真実です。別れは全ての人間に運命づけられています。夫婦でも肉親でも、命を預け合った仲間でも、必ず別れることになります。人は、生まれてくる時も独り、死ぬ時も独り。だから、どんな人も孤独の影を帯びています。
 とすると、「もし神がわたしたちの味方であるならば、だれがわたしたちに敵対できますか」、この言葉は大きな響きをもって迫ります。人は誰もが孤独の癒しを必要としています。でも、あなたと共にいてくれる存在は、あなたを受け入れ、あなたの人生を肯定してくれる存在でなければ、孤独の癒しはないでしょう。パウロが記したこの言葉は、孤独を本当に癒すのは神なのだと語ります。パウロ自身ここに希望を持ち、彼自身が癒されているのでしょう。
 詩編118:5~9にこうあります。「苦難のはざまから主を呼び求めると/主は答えてわたしを解き放たれた。主はわたしの味方、わたしは誰を恐れよう。人間がわたしに何をなしえよう。主はわたしの味方、助けとなって/わたしを憎む者らを支配させてくださる。人間に頼らず、主を避けどころとしよう。君侯に頼らず、主を避けどころとしよう」。
 造り主なる神を「私の味方」として仰ぎ見たい。それは、地上では孤独な人間の激しい衝動のようなものではないでしょうか。パウロも孤独を知っていました。それは同労者テモテに宛てた手紙などにも垣間見られます。それでも、パウロには自分を憐れむような雰囲気や、うちひしがれた気配はなく、自己憐憫がないのです。むしろ強い希望に溢れています、「神がわたしたちの味方であるならば、だれがわたしたちに敵対できますか」。誇っているような言い方です。 《神が私たちの味方!》この強い確信と希望はどこから来るのでしょうか? それは、「御子をさえ惜しまず死に渡された」出来事。十字架における神の御子の死です。最も愛すべき者を手放し、死に渡してしまう。その死を引き受けるために、神は人となってしまわれた。それがクリスマスでした。それほどまでして、神は私たちと共に生きようとされるお方です。だから人として生まれたイエスは、「インマヌエル(神は我々と共におられる)」と呼ばれるのです。
 「主は豊かであったのに、あなたがたのために貧しくなられた。それは、主の貧しさによって、あなたがたが豊かになるためだったのです」(2コリント8:9)。私たちが命を得、豊かになるためなら、神は最も大切なものさえ失う。この神が私たちの味方であるなら、誰が私たちに敵対できるか。誰が私たちの人生を脅かすことができるか。一体誰が、私たちの人生を空しく意味の無いものとすることができるというのか。
 パウロは言います、神が味方なら、全てのもの、万物さえ私たちに賜らないはずがあろうか、と。不安な時代は、誰もが自分のことで精一杯になり、自己中のエゴイスティックな社会となります。ある人は、「今だけ、カネだけ、自分だけ」と言いました。
 しかし、私たちには神がおられます。私たちを造り、愛し、独り子を下さった神が味方なのですから、最終的に何も失うことはありません。それどころか、全てを受けます。であれば、殺伐とした世でも、なげやりにならず、焦らない。信仰は祈りを生み、希望を生み、創意を生み、工夫を生むのです。
 孤独を覚えることがあっても、神に背を向けて言わば神を孤独にした私たちに、神は味方となってくださったことを覚えたい。この世に隔たりやよそよそしさを感じたら、神と私たちとの隔たりほど大きな、絶望的な隔たりはなかったことを思い起こしたいのです。その隔たりを、神が乗り越えて来てくださって、私たちの味方となられた。その恵みの事実を信じたいのです。
 

説教一覧(2019年度)

2019.4.7
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2019.4.14
正しい者は一人もいない
2019.4.21
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2019.6.2
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2019.6.16
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2019.8.25
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まず砕かれてこそ
2019.10.13 朝礼拝
土の器なれど
2019.10.13 夕礼拝
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2019.10.20
絶望から生まれた信頼
2019.10.27
あなたの怒りは正しいか
2019.11.3
肉に死に、霊に生きる
2019.11.10
祈りの動機
2019.11.17
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2019.12.1
神の子らよ現れよ
2019.12.8
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2019.12.15
万事が益となる
2019.12.22
人となった神
2019.12.29
神の主権と深い愛
2020.1.5
神が味方ならば
2020.1.12
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神の友になりなさい
2020.2.2
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2020.3.1
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2020.3.8
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2020.3.22
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