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主にあって

説教要旨(2月9日 朝礼拝より)
サムエル記上 1:12-2:11
伝道師 杉山悠世

 エルカナにはハンとペニナという妻がいました。当時子どもの存在が神からの最大の祝福と考えられていましたが、ハンナには子どもが無く、ペニナらか敵視されていじめられていました。エルカナは慰めと愛の言葉をかけますが、ハンナは慰められません。彼女は悲しみと怒りの渦の中にいました。そして、ついに立ち上がります。向かった先は主なる神の御前です。ハンナの苦しみの根本は神が「彼女の胎を閉ざしていた」事です。主なる神の祝福を求めて祈り始めました。ハンナは彼女を苦しめる出来事の現実的な解決を、対人関係ではなく、神との関係の中に求めたのです。あらゆる思いを主の前に「注ぎだし」ました。「注ぎだす」という表現は水の流れを連想させます。ハンナの祈りは注ぎだすというよりは、濁流のようだったのかもしれません。子供が与えられず、神から祝福されていないのではないかという悲しみ、ペニナからの嫌がらせ、膨れ上がった思いが一心不乱に祈りへと向かわせたのでしょう。けれども、彼女の固くなった心は祈りによって雪解け水のように確かに注ぎだされていったのです。祈りは、自分の願いや感謝を神の前ではっきり声に出して話す事であり、当時黙祷は珍しかったようです。
 教会で祈り方について質問をいただく事があります。集会や祈祷会で、人前で祈る事を想定されているのだと思います。なめらかに祈りの言葉が出てくる姿にあこがれるのでしょう。ハンナの祈りの全貌はわかりません。けれども、とうとうと溢れる祈りの言葉は決して、美しい言葉で語られた感謝や賛美ばかりではなかったでしょう。嗚咽の混じった、とぎれとぎれの祈りです。
 
 ある牧師は聖書に根差している祈りは「神の息を吹き入れられて生きる者となった人間の魂の呼吸」だと言っています。祈りによって、神の御前に生き生きと生きるようになるというのです。水泳を習う時にもまず、呼吸の練習をします。息を出しきる事に集中して吐き切ると、息を自然と吸うのです。ハンナは祈りによって、神のみ前で深呼吸をしていたのです。あらゆる思いを注ぎだして祈って、そして、自分が神の支配の中にある事を知ったのです。
 
 祭司エリに祝福して送り出されたハンナは神殿を後にしますが、その表情は以前のようではありませんでした。祈りの中で神に出会い、共におられる事を知ったからです。
 サムエルは乳離れして祭司エリのもとに預けられます。ハンナのもとには何も残りません。しかし、ハンナは平安を得、主なる神への信頼を堅くしました。悲しみや苦しみから解放されて主の前で生き生きと生きるようにされたからです。主のご計画に信頼してハンナはサムエルをささげたのです。
 ハンナの賛歌はダビデの歌と共に、サムエル記全体を縁取り、サムエル記のテーマを先取りした預言的な歌です。「主は地の果てまで裁きを及ぼし/王に力を与え/油注がれた者の角を高く上げられる」。「角」は力の象徴です。義なる神の支配が人間の王によって、世界にあらわされてゆく事を表しています。ハンナがそうであったように、神の支配は神により頼むものにとっては救いの力となり、逆らう者にとっては裁きとなるのです。
 「油注がれた者(メシア)」という時、特に王のような権威を持った者を意味する事が多く、メシアにかれる新しい時代の到来への期待が込められています。サムエル記で「王」を指した「油注がれた者」の称号は、新約で救い主を意味します。サムエルエルの誕生に関わる事柄は、サムエル油が注いだダビデの家計に、主イエス・キリストが救い主としてこの世にお生まれになる事を預言です。主イエスによって神のご支配が直接的にわたしたちに与えられている事を感謝いたします。

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