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十字架による新創造

説教要旨(2月4日 朝礼拝より)
ガラテヤの信徒への手紙 6:11-18
牧師 藤盛勇紀

 この手紙の結びに、「これからは、だれもわたしを煩わさないでほしい」とパウロは言います。根本的に大事なことはすでに伝えた。だから、あなたがたが聞いて信じている真理に立って生きればよいのだと。それを、「このような原理に従って生きていく」と言います。「原理」とは、拠って立つべき根本的な基準です。パウロは、「このような原理」に従って生きていない人のことを「肉において人からよく思われたがっている者たち」と言います。人からよく思われたいのは万人に共通ですが、パウロが言っているのは、もっと突っ込んだ問題です。「キリストの十字架のゆえに迫害されたくないばかりに、あなたがたに無理やり割礼を受けさせようとしています」。
 当時のローマ帝国内では、ある程度の自治が認められ、様々な宗教も公認されていました。ユダヤ教もその一つです。割礼も受けるべきと教えていた人たちは、キリスト者として生きるにしても、ユダヤ教の一派としての地位を確保しておいて、不利益を被らないように、迫害を受けないように生きたいと考えたのです。自分のために十字架についてくださったキリストを信じ、洗礼も受けた。けれども、自分の人生をこの方に賭けてしまうのは無理だ、他にも生きる道を残しておきたい、人から悪し様に言われたり、仲間はずれにされたくないと。
 しかし、主イエスは人から嫌われ、嘲られ、無価値な者として捨てられ、呪われました。この方に結ばれて命を得たキリスト者が、人から馬鹿にされたり、悪し様に言われることがあったとしても当然です。
 ニーチェはキリスト教を「奴隷の宗教」と言いました。そんな批判を受けると、焦って慌ててしまい、キリストと十字架の出来事を人に受け入れやすい、素晴らしい英雄の宗教のように取り繕いたくなり、キリストを模範的な人間に仕立て直したくなる。そうやって、十字架の出来事に現された計り知れない恵みから落ちてしまうのです。
 「しかし、このわたしには、わたしたちの主イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません」とパウロは宣言します。私たちは、「人からどう思われているか、自分はこの世からどう評価されているか、どういう能力が認められているか」が気になります。いつもこの世から様々な物差しが当てられ、「あなたは何点」と計られ、私たちは必死にその尺度に合わせようとします。子供の頃からずっとそうなので、この世の尺度に合わせなければ生きていけないと、固く思い込んでいます。それはまさに《奴隷の宗教》です。
 しかし、この世に合わせ、人の顔色を伺い、見栄を張ってがんばり、人にへつらい卑屈になり、人を見下して思い上がる。そんな奴隷のあなた、そんな肉の人は、あの十字架にはりつけにされたのです。この世に合わせて生きる古い私たちは終わったのです。そして、キリスに結ばれた者は罪赦され、霊によって新しく生まれ、神の子とされました。だから、主の十字架のほかに誇るものが決してあってはならない、と言えるのです。十字架はこの世で最も醜く惨めで、酷たらしいもの、人間の醜さが最も集中した所、愚かなものです。
 しかしそこに降ったのは、神の御子でした。私たちが新しい命に生きるためです。「大切なのは、新しく創造されることです」とあります。キリストの十字架には、この世にはない途轍もない新しさがあり、「新しい創造」があります。ここに、私たちの平安があり、慰めがあり、力があり、全てがあり、命があります。だから、もう他のところに行く必要はないのです。「このような原理に従って生きる人の上に、つまり、神のイスラエルの上に平和と憐れみがあるように」。「わたしたちの主イエス・キリストの恵みが、あなたがたの霊と共にあるように、アーメン」。
 

説教一覧(2017年度)

2017.4.2
信仰への一歩
2017.4.9
主がお入り用なのです
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2017.4.23
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2017.4.30
見えるようになれ
2017.5.7
主と共なる食事
2017.5.14
命の声を聞き分ける
2017.5.21
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2017.5.28
人によらず、神により
2017.6.4
真理の霊が来る
2017.6.11
神の子らよ、生きよ
2017.6.18
今日、必要なもの
2017.6.25
虫の良すぎる話
2017.7.2
神による回心
2017.7.9
離散している人たち
2017.7.16
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まっすぐで自由な道
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2017.8.6
私の内のキリスト
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2017.9.10
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2017.11.5
神の賜る命
2017.11.12
父と家
2017.11.19
イエス・キリストの名によって
2017.11.26
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キリストが形づくられる
2017.12.10
油を用意して待て
2017.12.17
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2017.12.24
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2017.12.31
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2018.1.7
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2018.1.14
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2018.2.4
十字架による新創造
2018.2.11
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試練か誘惑か
2018.3.18
神の国の手付金
2018.3.25
心の目が開かれて