キリストが充ち満ちる
説教要旨(4月15日 朝礼拝より)
エフェソの信徒への手紙 1:20-23
牧師 藤盛勇紀
直前の19節に「神の力」とあります。「力」(デュナミス)という言葉は、ある神学者は「受け継いだ力」だと言いました。親から子に生まれながらに受け継がれたものです。キリストを信じる者は、霊から生まれた者、神から生まれた者とされました。生まれたということは、すでに何かを受け継いでいるのです。その一つが神の「力」です。
「えっ? 私が神の力を受け継いでいる?」「私なんか」「私は弱い者です」と思われるかもしれません。パウロも「誇る必要があるなら、わたしの弱さにかかわる事柄を誇りましょう」「大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」と言ったではないかと。しかしパウロは、「キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ喜んで自分の弱さを…」と言ったのです。弱いままではないのです。「わたしは弱いときにこそ強い」と言います。これはパウロの自信から出ているではなく、パウロに対して、主がこうおっしゃったからです、「わたし(主)の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中でこそ十分に発揮されるのだ」(2コリント12:9)。だから、「私は弱いんです」と言って弱さの中に隠れるようなあり方は、神の恵みを無にすることに等しいのです。
私たちは「すでに」祝福され、恵まれ、力をいただいています。それは自ら努力して獲得した力ではなく、生まれながらに得ている力です。キリスト者は新しく生まれさせていただいた者ですから、すでに「持っている」のです。
パウロは、この手紙の本文をこういう言葉で語り始めました。「神は、わたしたちをキリストにおいて、天のあらゆる霊的な祝福で満たしてくださいました」(1:3)。ここから語り始めたのです。私たちは神によって「すでに」どういう者とされているか、そこからなのです。
私たちは、自分の力によってではなく、ただ恵みによって、神の子とされました。だから、私たちはすでに持っている。これは、私たちに「何ができるか、何をするか」の問題ではなく、「生まれ」の問題です。生まれながらにすでに持っている、それに気付くのは、「信仰」によります。そして、信仰は「聞くこと」によります。しかも「キリストの言葉を聞くことによる」(ローマ10:17)と聖書は言いますが、これはイエスが語られた言葉であると共に、イエス・キリストに現された神の出来事としての言葉でもあります。
私たちはキリストの言葉を聞くことによって、眠っているものが引き出され、気付かされ、それまで知らなかった信仰的な事実、霊的リアリティーに触れます。肉の目では決して見えなかったものを見るのです。
その時、私たちの信仰の目は、キリストの言葉を聞くように、キリストに焦点が合わされます。だからパウロは言います、「神は、この力をキリストに働かせて、…」。神の絶大な力は、キリストに働いたのです。キリストに現された出来事、主イエスの御言葉と御業は、すべて私たちの救いのためでした。すべては、私たちが神の命に与り、神の子として生きるため、私たちを通して神の御心がこの地上に行われ、私たちを通して神の御栄光が現され、神が栄光をお受けになるためです。
神はキリストを「教会にお与えになりました」とあります。教会は、見えざるキリストの体であり、一人の主キリストに結ばれた私たちのことです。キリストは私たちに与えられました。そして、私たちはキリストのものとされています。この命の交わりの中に、キリストご自身が充ち満ちていてくださるのです。
この祝福はすでに満ちていますから、それを知らないで生きてはなりません。私たち自身、キリストのものとされていることを受け入れ、受けいれたならば信仰の目が開かれて、神の力が現されるのです。
説教一覧(2018年度)
2018.4.1
死の涙の終わり
2018.4.8
見ゆる希望は希望にあらず
2018.4.15
キリストが充ち満ちる
2018.4.22
天に座す我ら
2018.4.29
神の恵みは現れる
2018.5.6
遺残は遠く、今は近い
2018.5.13
神を神として賛美する
2018.5.20
新しい人間の創造
2018.5.27
我らは神の住まい
2018.6.3
知らされた計画
2018.6.10
計り知れない富
2018.6.17
罪人を招くイエス
2018.6.24
とれない弾丸
2018.7.1
大胆に神に近づく
2018.7.8
御言葉を行う
2018.7.15
主の愛を味わう
2018.7.22
主は一人
2018.7.29
一人ひとりへの賜物
2018.8.5
成熟した人とされる
2018.8.12
新しい人を着る
2018.8.19
恵みが響き合う
2018.8.26
勝ち戦
2018.9.2
神の愛に留まる
2018.9.9
尊い神の秩序
2018.9.16
あなたは光の子
2018.9.23
霊による賛歌
2018.9.30
キリストが愛された教会
2018.10.7
結婚のミステリー
2018.10.14
裏切り者をも
2018.10.21
神の親心
2018.10.28
地上に敵無し
2018.11.4
神の国を前方に見て
2018.11.11
ここから見れば
2018.11.18
私たちの主、イエス
2018.11.25
あなた方の間に主の平和
2018.12.2
神の武具をまとう
2018.12.9
絶えず祈れ
2018.12.16
獄中の光
2018.12.23
見よ、救いのしるしを
2018.12.30
主である私が語り、行う
2019.1.6
朽ちない愛の恵み
2019.1.13
ひとつの福音
2019.1.20
我、ここに立つ
2019.1.27
あなた方もここにいる
2019.2.3
はるかな距離を超えて
2019.2.10
体に必要なもの
2019.2.17
福音は神の力
2019.2.24
福音を恥じず
2019.3.3
人間の不義と神の愛
2019.3.10
自由という転落
2019.3.17
終わりから今を見る
2019.3.24
お別れの挨拶
2019.3.31
波打つ大地に立つ