今週の説教
見よ、救いのしるしを
説教要旨(12月23日 クリスマス礼拝より)
ルカによる福音書 2:8-20
牧師 藤盛勇紀
「主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた」。誰でも経験があります。今までは意識したこともなかった事が強烈に意識される。「自分には関係ない」と思っていたことが、ふと「自分のこと」として感じられる。今まで考えたこともなかったのに、「私って何だろう」、スポットライトを当てられたように、自分を見つめさせられる。
天使は私たちの魂に直にアクセスします。多くの場合、その人が自分の内なる「暗さ」や「闇」を見つめざるをえない時です。「今まさに闇の中だ」と感じている人だっているでしょう。病を抱えて展望がない、仕事が行き詰まって将来が見えない、何をしてよいのか分からない、孤独だ。いつでもどこでも「暗闇」はある。聖書はそれを単に「世」とも言います。
クリスマスのメッセージは、そんな「暗闇のただ中に、光が来ている」というのです。「闇の外」ではなく、「暗闇の中で」、命の光がすでに輝いていると。イザヤ書9:1にこうあります。「闇の中を歩む民は、大いなる光を見」「死の影の地に住む者の上に、光が輝いた」。「闇の中を歩む」者、「死の影の地に住む者」が、大いなる光を見、彼らに光は輝く、というのです。
羊と共に生活する「羊飼い」は、当時蔑まれていた職業でした。「あの連中は神の恵みから漏れたヤツらだ」と。羊飼いたちはただ耐えるしかない。この夜も闇の中でたき火の炎を見つめ、自分自身の心の闇、寂しさを見つめて、じっと膝を抱えて、夜を耐えていたのかもしれません。
そんな暗闇の中に座る人たちに、最初に、大いなる光が与えられたのです。天使は突然迫って、唐突に告げます。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである」。
いきなり「恐れるな」と言われても。「あなたがたのための救い主」っていったいどういうこと? 天使はせっかちです。勝手に一方的に告げます。「あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである」。
救い主が「乳飲み子」、しかも「飼い葉桶」に寝ている? このしるしを見て救いを信じろと言われても無理です。ところが、この羊飼いたちにとって。確かにそれが「しるし」となったのはなぜか。
彼らは、天使が告げる言葉がよく理解できなかったでしょう。しかし、おそらく彼らは直感したのです。救い主が、飼い葉桶の中の赤ん坊。何という貧しさ、何という弱さだろう。布に巻かれて家畜のエサ箱。なんと惨めな姿だろう。彼らの直感はおそらくこうです。この救い主は、力をもって脅かす王ではない! 知識をひけらかして誇る学者ではない! 豊かさを見せつけて、貧しい者を辱める者でもない! 何とも貧しいお方だ! つまり、「俺たちと同じじゃないか!」
救い主イエスは、「暗闇の中を歩む者」の光なのです。まさに「光は、暗闇の中に、輝いている」(ヨハネ1:5)、これが実現したのがクリスマスです。
「しるし」があるということは、「自分で行って見よ!」ということです。羊飼いたちにとって、信じがたい「しるし」が確かな「しるし」となったのは、彼らが自ら行ってみたからです。ベツレヘムの町は近くて遠い。町に近づくのは気が引ける。しかし行ってみた。そして彼らは「神をあがめ、賛美しながら」、つまり大いに喜びながら、帰っていったというのです。彼らはもう暗闇に座す者ではない。顔を上げて喜ぶ者。祝福から漏れた者ではない、神の言葉を聞けない者でもない、恵まれない者でもない。むしろ、それらに満たされたのです。
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