お別れの挨拶
説教要旨(3月24日 朝礼拝より)
使徒言行録 20:17-24
牧師 山下瑞音
この箇所は、使徒パウロがエフェソの教会の人たちに「別れの挨拶」を述べている場面です。今読んでいただいたところの直後の25節を見てみると、「そして今、あなたがたが皆もう二度とわたしの顔を見ることがないとわたしには分かっています。」と言って、パウロがもうこの人たちとは二度と会えないかもしれないということを覚悟していることが分かります。この言葉は、よく考えてみるととてもユニークな別れの挨拶です。パウロは、自分は一生懸命福音を伝えてきたということ、なぜならそれが自分の使命だからだということを、別れ際のこの期に及んで言うのです。それは一体なぜでしょうか。それは、この福音を伝えるということが、人間の命に係わる最も大切な教会の使命だからです。もっと端的に言えば、人を助けるために一番必要なことは、福音を伝えるということなのです。
私たちは誰でも、人の役に立ちたい、困っている人が居れば助けてあげたいという思いを持っているはずですしかし、実際にやってみると、人を助けるというのは本当に難しいことだと実感します。イエス様がなさったように、私たちも隣人に寄り添って生きるということは、相当な労力や決意が必要になる、並大抵のことではないのです。では私たちはどうすればいいのでしょうか。困っている人が居た時に、私たちは何もできないからと言って、見捨てるべきなのでしょうか。そうではありません。私たちにも出来ることがあります。それが福音を伝えるということ。なぜなら、福音は私たちの無力さや限界とは関係なく力を発揮するものだからです。
福音は私たちの限界を超えて広がってゆきます。そして福音は、いつまでも心の中に残り続けるのです。だからパウロはここで、自分は福音を伝えるために生きているんだ、ということを胸を張って言うのです。パウロは自分の使命を探し求める中で、その答えをイエスキリストに出会うことによって、福音に救いを見出しました。
福音には大きな力があります。自分の命でさえも比べることのできないような救いが、私たちの信仰には宿っているのです。そしてこのことは、私たち自身が一番よく知っているはずではないでしょうか。なぜなら、私たちもまた福音によって救われたからです。出会い方は人それぞれであったとしても、私たちはみんな同じように、初めて聖書に触れた時以来、心の中にはずっと福音が残り続けているのです。そしてその福音によって、私たちの人生は変わったのです。もはや、不安や恐怖は過去のものになりました。福音がいかに力強いかということ、福音だけが人を助けることが出来ることの証人が、まさに私たちなのです。
人を救うことが出来るのは福音だけです。お金があっても人は幸せにはなれません。どんなに環境が恵まれていても人の心は満たされないからです。本当に人を救うことが出来、私たちの人生を変えることが出来るのは、福音だけなのです。私たちには限界があります。しかし福音はすべてを超えて広がってゆきます。私たちは弱くて非力です。しかし福音にはすべての人を生かす力があります。たとえ私たちが死に、あらゆるものが変わったとしても、福音は響き続けるのです。この福音に生かされていることを信じ、福音があらゆる絶望を滅ぼし尽くし、世界を変えることを信じて、私たちも福音伝道の戦列に加わって、大胆に御言葉を宣べ伝えようではありませんか。
説教一覧(2018年度)
2018.4.1
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2018.4.8
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2018.4.15
キリストが充ち満ちる
2018.4.22
天に座す我ら
2018.4.29
神の恵みは現れる
2018.5.6
遺残は遠く、今は近い
2018.5.13
神を神として賛美する
2018.5.20
新しい人間の創造
2018.5.27
我らは神の住まい
2018.6.3
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2018.6.10
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2018.6.17
罪人を招くイエス
2018.6.24
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2018.7.1
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2018.7.8
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一人ひとりへの賜物
2018.8.5
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2018.8.19
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2018.8.26
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2018.9.2
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2018.9.9
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2018.9.23
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2018.10.7
結婚のミステリー
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裏切り者をも
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神の親心
2018.10.28
地上に敵無し
2018.11.4
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2018.11.18
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2018.11.25
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2018.12.2
神の武具をまとう
2018.12.9
絶えず祈れ
2018.12.16
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2018.12.23
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2019.1.6
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2019.3.17
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2019.3.24
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2019.3.31
波打つ大地に立つ