十戒 

説教要旨(11月 14日 朝礼拝)
申命記 第5章6~12節
ルカによる福音書 第 18章18~30節
橋本いずみ

 「善い先生、何をすれば永遠の生命を受け継ぐことができるでしょうか?」と尋ねる議員に、「あなたは永遠の生命を受け継ぐために、十戒が与えられたことを知っているはずだ」と主イエスは仰せになります。十戒に記されている掟をお語りになる前に、神だけが善いお方であるということをお教えになります。
 十戒の始まりは、「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導きだした神である」という言葉で、これなしに続く十の戒めを理解することはできません。神が最初にお語りになられるのは、神が死の危険にさらす奴隷の支配から、神の支配に招いてくださったということです。神は、「生きる」ために必要なことを、十戒をもって語られます。生命を受け継ぐために、何をなして、何をしてはならないかをお教えくださいました。神が十戒を教えられたのは、人が神と共にある生命を受け継ぐためです。
 主イエスは、「神が人に慈しみを注ぎ、生命を受け継ぐためにあなたがたには、十戒が教えられているだろう」と十戒を思い起こさせます。それに対して、議員は、「そういうことは、みな子どもの時から守ってきました」と答えます。旧約聖書では、戒めと掟を守る者に、神は富と財を伴う祝福を与えてくださるという考え方がありますので、この議員が大変な金持だったことは、戒めと掟を忠実に守っていたゆえに、神が祝福を与えてくださったという祝福のしるしであったということができます。
 主イエスは、議員にかけていることが一つあると言って、持っている物をすべて売り払い、貧しい人に分けてやり、わたし(主イエス・キリスト)に従ってくるように命じます。永遠の生命を受け継ぐために、「持っている物を手放して、さあ、わたしのところにおいで」と言われるのです。
 この言葉を聞いて議員は非常に悲しみます。なぜなら、無一文になって、主イエスに従うことはできない、と思ったからです。この悲しみは、主がゲッセマネの園で受けられた「悲しみ」です(マルコ14.32)。主は決して誰も十字架に伴うことができないことを知って、悲しみ悶えるのです。そして、主イエスは、主の後に従いゆくことのできない者たちのため十字架にお架かりになられました。
 悲しむ議員を見つめて仰せになります。「財産のあるものが、神の国に入るのは、何と難しいことか。金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい」結局、誰も主に従うことできる者はいない、と言われ、そこで、主は「人間にはできないことも、神にはできる」と言葉を続けられます。神の国に入ること、救われること、永遠の生命を受け継ぐことは、人間には、決してできないことであり、どうやっても無理なことなのです。それが、大金持ちであろうとたとえ貧しい人であったとしても、です。
 しかし、神にはできる。神だけが人を神の国に入れ、救い、永遠の生命を受け継がせることができるというのです。神は、どんな人であったとしても、神の国に入れることがお出来になる。財産を捨てきれず、そこで戸惑い、悶え、苦しむ者を、神だけが変えることがお出来になることをお教えくださいました。
 更に主イエスは、神によって、無一文になって主イエスに従うものへと変えられたものは、必ず、その報いを受けて、永遠の生命を受けるというのです。永遠の生命が、わたしたちを生かします。わたしたちは、この世に生きるときにも、永遠の命を生きます。神と共なる生命、わたしたちをまことに生かすその生命を生きるのです。後の世にも変わることのない生命、それを神がお与えくださると主イエスは、わたしたちに教えてくださいました。
 「捨てられない」わたしたちのために、主は、十字架にかかり、甦られました。この神のお力に信頼して、わたしたちは、主に従い行く者でありたいと思います。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか