ホーム | 説教 | 説教(2010年度) | 神によって生まれる

神によって生まれる

説教要旨(2月20日 朝礼拝 )
詩編 第118章22~25節
ヨハネによる福音書 第 1章9~13節
倉橋康夫

 最初に、<9 その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。>、とあります。ヨハネ福音書の最初の段落で、その光とは、「言」(ことば)のことであり、人に「命」を与えるもの、と言われていました。光は、私たちを容赦なく照らし、明るみに出されたくない部分も照らし出します。それによって、人の罪の現実が暴かれることになるでしょう。けれども、そこから、命への道を示してくれるのです。
 この光は、1~5節で既に読んだように、天地創造にたずさわった<言>・主イエス・キリストのことです。ところが、<10 言は世にあった。世は言によって成ったが、世は言を認めなかった。>、と言います。この世は、この<言>によってできたのであり、この<言>によってのみ、命が与えられるのです。しかるに、<世は言を認めなかった>、のです。
 これは、悲しむべき事態です。世が、自分を造り、命を与えて下さる方を認めようとはしなかったのです。無知無関心ということではなく、拒絶し、抹殺したのです。拒絶された<言>の悲劇性も見過ごすことができませんが、それ以上に、ここでは拒絶した<世>そのものの悲劇・悲惨が意味されております。
 更に、<11 言は、自分の民のところに来たが、民は受け入れなかった。>、と重ねられます。<世>と言われていたものが、もっと具体的に、<自分の民>・<民>と言われます。この11節は、「最小のイエス伝」と言われます。この1句に、主イエスの全生涯が語り尽くされている、と言うのです。<言>なる主イエス・キリストは、ご自分に属する者のところに来られたのに、即ち、私たち人間は本来主に帰属する者である筈なのに、その主キリストを拒絶した、のです。主イエスのご生涯は、そのようにして、十字架の死に至るものでした。
 このような悲劇的な事態に対する、神の回答が12、13節に示されます。<12 しかし、言は、自分を受け入れた人、その名を信じる人々には神の子となる資格を与えた。13 この人々は、血によってではなく、肉の欲によってではなく、人の欲によってでもなく、神によって生まれたのである。>、と。ここには、神が恵みのみ手をもって、為して下さる奇跡的な出来事が語られています。
 併せて読んだ、詩編 第118編に、<22 家を建てる者の退けた石が/隅の親石となった。23 これは主の御業/わたしたちの目には驚くべきこと。/24 今日こそ主の御業の日。/今日を喜び祝い、喜び踊ろう。/25 どうか主よ、わたしたちに救いを。/どうか主よ、わたしたちに栄を。>、とあります。家を建てる者たちが、棄て去った石が、<隅の親石>・肝心要(かんじんかなめ)の石とされるのです。これは、主イエス・キリストの十字架の出来事を指し示す、み言葉の1つです。主の十字架は、神の恵みによって成し遂げられた、救いのみ業だったのです。
 ところで、ヨハネ福音書では、更なる逆転の事態を指し示しています。それは、<受け入れた人>、<その名を信じる人々>が起こされる、という出来事です。<受け入れた>ことも、<信じる>ことも、それらの人々の手柄なのではなく、<神によって生まれた>(13節)のであり、神の霊によって導かれて生起した出来事です(ロマ8 : 14参照)。
 「キリストが石から神の子たちを起こした時、事態の信じがたい転換が生じたのである。」(カルヴァン)石のような硬く、頑なな者を、主の十字架との出会いを通して打ち砕き、神の子として下さったのです。私たちも同じように、<神によって生まれた>者です。また、「神によって生まれる」ことは、信仰の歩みにおいて進行形です。主の十字架の恵みを繰り返し受け、養われつつ進める歩みだからです。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか