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人となった神

説教要旨(12月22日 クリスマス朝礼拝より)
ヨハネによる福音書 1:1-18
牧師 藤盛勇紀

 ベツレヘムの町のある家畜小屋。まさに世の片隅に追いやられた救い主の誕生でした。それを知ったのはごく僅かな人たち。野宿をしていた羊飼いたちと、東方の国から星に導かれてやって来た素性不明な占星術師たちです。彼らは、暗く臭い家畜小屋の飼い葉桶に寝かされた乳飲み子を見つけ、この幼子が真の王、救い主、神だと知って礼拝した。それが最初のクリスマスです。
 マタイ福音書やルカ福音書のそうした報告や物語は、このヨハネ福音書にはありません。しかし、ヨハネもあの出来事を何とか伝えたかった。ただ、《神が人となって生まれた》出来事がいかに途方もない事かを考えたら、どう語るか途方に暮れたでしょう。人間の知恵の言葉や経験で理解できるイメージによって伝えるのは不可能。
 ヨハネはまず、イエス・キリストを「言」と表現しました。当時のギリシアの世界でもよく知られた重要な言葉である「ロゴス」。話したり書いたりする言葉とは違い、その背後にある論理や真理、自然や歴史の背後にある変わることのない秩序や理法、その根源である永遠なる神の意志。ヨハネはそうした「ロゴス」を思い、この言葉を利用してキリストのことを語り始めたのです。「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」。
 キリストは「言」、創造主なる神そのもの。「世は言によって成った」。ところが「世は言を認めなかった」。「言は、自分の民のところへ来たが、民は受け入れなかった」と言います。「自分の民」とは、神の民イスラエル。なのに、その神の民が神を拒絶したのだと。これは、神に背くこの世であり、私たち人間の姿でもあります。
 では、神を否定する人間に対し、神はいったいどうなさったのか。ヨハネはついに、言ってはならない言葉をあえて記します、「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた」。永遠のロゴスなる神が「肉」となった。こんな馬鹿げた話はありません。肉なる人が永遠なるものに憧れ近づこうとするなら分かる。けれども、永遠なるものが肉になってしまうとは、なんと愚かしい話か。
 しかし、それが本当ならば! 書かずにおれない! 伝えずには止まないのです。ここで「肉」とは、神と無縁の者となって生きる人間のことです。「神などいない」「いたとしても神が私と何の関係があるのか」と、自らの存在と命の根源である造り主から離れ、自分の存在の意味も目的も失って、とりあえず生きている人間の姿です。
 しかし神は、そんな私たちを放ってはおかれません。「結局分からないんだ」と開き直るしかない人間の切なさ、暗さ、希望のなさを、聖書は「世」と言い、「暗闇」とも言います。神は、肉なる人間を暗闇の中に捨て置くことはできず、ご自分からこの暗き世に到来し、「肉」となってしまわれた。
 神は、ご自分が造り命を与えた私たちを、どうしても手放せない方です。真の命を失っている私たちを、ご自分のものとし、その命に与らせるために、神はそのふところなる独り子を手放し、私たちの代わりに死なしめ、私たちの父として、私たちを子として迎えてくださったのです。
 神はご自分を犠牲にして、私たちへと来られます。神がご自分を捨ててしまうほどに貧しく惨めになられた。それはイエスの十字架の姿に極まります(フィリピ2:6~8)。その姿に、私たちがいかに遠く神から離れていたかが示されています。その超えられない隔たりを、神はあえて超えてしまった。
 そうまでして来てくださった神、この方と出会い、触れていただく。何とありがたいことか。何と尊いことか。何と豊かなことか。それを知って、感謝して主をほめたたえる。それがクリスマスです。
 私たちの命の光である神は来てくださって、生きておられます。この恵みの事実が、闇の中でも、私たちを生かします。
 

説教一覧(2019年度)

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2019.10.27
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2019.12.1
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2019.12.8
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