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神の義と愛

説教要旨(11月12日 朝礼拝より)
マタイによる福音書 5:1-6
牧師 藤盛勇紀

 5章から7章の「山上の説教」は、一般的にも有名な言葉の宝庫です。人生の深い問題に触れていると思わされる一方、「私には無理だ」「この言葉に従える人間がいったいどこにいるのか」とも思わされます。山上の説教を読んで行くと気づくことですが、イエス様は、神の律法をどう理解するかという点で、驚くべき解釈を示されます。その時の肝が、「神の義」です。「あなたがたの義が律法学者やファリサイ派の人々の義にまさっていなければ、あなたがたは決して天の国に入ることができない」(5:20)。「何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい」(6:33)。
 ここで詳しくは触れませんが、神の義は、罪人を赦し、不信仰で不義な者を義とする義、ただ恵みによる義、それをいただく信仰による義です。学者やファリサイ派の人々は、律法を自ら行うこと、その行為、行いによって義を得ようとしました。しかし、主は「外面より内面」を見られます(サムエル上16:6)。
 イエスは「御国の福音」を宣べ伝えましたが、律法学者やファリサイ派は、神の国に入るための義を追求しました。イエスは律法について、その解釈を徹底し(5:17~)、「あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい」と言われます。いったいどのように「完全な者」になり得るのでしょうか。
 イエスをメシアと信じて拠り頼む人は、その信仰によって、神の義に与っています。ただ主に信頼して義に与った人のことが、イエス様が語る8つの幸い(八福)で表されているのです。イエス様はこれらを弟子たちに語りました。ご自分を信じる人たちを見て、「なんと幸いなことか」と、感嘆しておられるのです。原文では最初に「幸いなるかな」の言葉で始まります。「幸いな人々よ、私はこのために世に来た。そしてこのために私は十字架の死へ向かうのだ」。
 「心の貧しい人々」とは、心が卑しいといったことではありません。「心」と訳されている言葉は「霊」です。霊的な貧しさを知っている人。神の前に私は何でも無い、何かお出しできるようなものは一切無い、自分の義など全く当てにしない、誇るものがない。ただ「神の義」に依り頼む。ルカ福音書18:9~14のたとえで、義とされたのは、律法をきっちり行っている人ではなく、ただ神の憐れみを求めた罪人、徴税人でした。
 人は皆一人残らず貧しいのです。しかしそれが分からない。自分の力で貧しさを脱して豊かになることが可能だと思っています。もしあなたがそう思っていたら、イエス様はあなたを見て「幸いだ」とは言えない。むしろ「なんと不幸なことか」と言われたでしょう。
 霊的に神との関係を絶ってしまった「自然の(魂の)人」は、霊が消えたまま、魂をやり繰りし、魂に燃料を投入し、魂を駆動しています。それを、惨めだと思うかどうか。自分を非の打ち所のない人と自認しパウロは、「私は何と惨めな人間なのでしょう。死に定められたこの体から、だれが私を救ってくれるでしょうか」と嘆きました。律法の義については非のうちどころのない者と、自他共に認めるほどに徹底して生きても、定まっていることは、死ぬことだけです。この惨めさ、救いようのなさ。どうにも救いようのない自分。それを知っている人が「心の貧しい人」です。
 「主よ、こんな私をどのような者となさるか、あなただけがご存じです。あなただけが、私を何者かになすことがおできになります」。 主はそのようにご自分にすっかり信頼する者、より頼む者を喜んでくださいます。「幸いな者よ。私はあなた方にこの命を与えるために来たのだ。神の国、神の義、神の命は、まさにあなた方のものなのだ」。
 「悲しむ人々」も「柔和な人々」も「義に飢え渇く人々」も、根本的には同じです。罪のもとにある自分と世の状況を悲しむ人。静かにただ神に信頼する人。そうした人々は、神が用意し与えてくださる罪の赦しを経験し、愛の主との命の交わりの中に自らを見出し、ゆったりした平安を生きるのです。

説教一覧(2023年度)

 
2023.4.2
霊で祈り、理性で祈る
2023.4.9
あなた方に平安あれ
2023.4.16
全生涯続く喜び
2023.4.23
秩序と平和の神
2023.4.30
熱意とバランス
2023.5.7
神の恵みが現れた
2023.5.14
何を求めているのか
2023.5.21
最も惨めな者
2023.5.28
アッバ、父よ
2023.6.4
一人の一人による新しい命
2023.6.11
裁くことからの自由
2023.6.18
聖霊によって語り、聞く
2023.6.25
復活の希望による力
2023.7.2
最後のアダムは命の霊
2023.7.9
死よ、お前に勝利はない
2023.7.16
伝道の幻と戦い
2023.7.23
天地を結ぶ
2023.7.30
雄々しく、強くあれ
2023.8.6
マラナ・タ
2023.8.13
憐みに胸を痛める神
2023.8.20
イエス・キリストの系図
2023.8.27
イエス・キリストの誕生
2023.9.3
あの方の星に導かれて
2023.9.10
希望への退避
2023.9.17
天の記録
2023.9.24
神が近づいた
2023.10.1
壮大な業の開始
2023.10.8
神の前に一人で立つ
2023.10.15
悪魔に対抗する道
2023.10.22
メシアの伝道
2023.10.29
神の国は進む
2023.11.5
イエスに従う者たち
2023.11.12
神の義と愛
2023.11.19
神の愛に包まれた者
2023.11.26
主の奇蹟の時
2023.12.3
大いに喜べ
2023.12.10
ヒゼキヤの信仰
2023.12.17
地の塩、世の光
2023.12.24
飼い葉桶のメシア
2023.12.31
神の国に入る者
2024.1.7
なぜ腹を立てるのか
2024.1.14
永遠なる御父の宮
2024.1.21
祝福された関係
2024.1.28
主の真実を信じる
2024.2.4
太陽を昇らせ、雨を降らせ
2024.2.11
安心して行きなさい
2024.2.18
人の報いと神の報い
2024.2.25
あなたが祈るときには
2024.3.3
天の父よ
2024.3.10
いのち注ぐ恵み
2024.3.17
神の国を味わう
2024.3.24
十字架の神の御名
2024.3.31
そこで私に会うことになる