大いに喜べ
説教要旨(12月3日 朝礼拝)
マタイによる福音書 5:9-12
「平和を実現す人々は、幸いである」。複雑な思いで聞かざるを得ません。ウクライナ戦争もガザでの戦闘も終結の気配もない。いったいこの世界のどこに平和が実現されたでしょうか。「平和を実現する人々は、幸いだ」。ある人にとっては重々しく響き、ある人にとっては空しい言葉に響くでしょう。まして、その人たちは「神の子」と呼ばれるとなると、ますます無理だと思わされてしまいます。
しかし、イエス様はこの言葉を誰に語ったのでしょうか。近くに寄って来た人々にです。ペトロらガリラヤの漁師たち、その他ガリラヤ地方の名も無く貧しく無学な人たち。「暗闇の中を歩む民」(イザヤ9:1)と蔑まれた彼らをご覧になって、「幸いなるかな」と言われたのです。私たちも、平和を実現すると言ってもどうすればよいか思いも付かない者です。そんな私たちに言われるのです。「幸いだよ、平和を実願するあなたがたは」と。
いや、主よ、私たちは、「平和を乱しているのは、お前たちだろ」と言われる始末です。まるで無力です。人を憎んだり争ったり、平和を乱す元になることもしています。関係の破壊者です。神を侮った者、神を捨てた者だと言われても仕方ない者です。
しかし、主は言われるでしょう。「そんなこと分かっているよ、私の子らよ。だから、そんなあなたたちのために私は来たんだ」と。平和を実現することを考えたら、途方に暮れて自分の無力に沈むような私たちに、先ず主ご自身が近づいて来られたのです。今日からアドヴェント。「アドヴェント」は、近づいて来る、到来するという意味です。真の神の子は、神であられながら、神と等しい者であることに留まろうとなさらず、ご自分を無にして、私たち人間と同じ者となって、世に来られました。神は人となられた、というだけでなく、罪人の一人になってしまったのです。それは、私たちの全ての罪を負って、犠牲となり、償いとなるため。ご自身の血によって私たちを神の命へ取り戻すためでした。神の御子が「来られた」とは、そのように、「敢えて」来られた、ということです。だから主は、ご自分に近づいて来る者を慈しんで、喜んでくださいます。自分の内に沈むな、自分の力に頼るな。私だ、私を見なさいと。
「神の子」などと呼ばれる資格などない私たちです。平和を実現するなんて無理、と言うしかない私たち。「お前らがキリスト教が平和を乱しているんだ!」と罵られる私たちに、主は、「幸いなるかな」と言われます。主が言われるから、私たちも躊躇いがちな思いを持ちながでも、「平和を実現す人々は幸いだ。その人たちは神の子と呼ばれる」と言い続けます。主が、このお言葉を私たちの間に響かせてくださっているからです。
「義のために迫害される人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである」とも言われます。「平和」と「義」はどちらも、私たち自身では、実現することができず、獲得することもできないものです。「神の国は、…聖霊によって与えられる義と平和と喜びなのです」(ローマ14:17)。私たちが獲得するのでなく、私たちの内に住んでくださっている主の霊によって与えられるというのです。神ご自身が、私たちを通して、それをなさりたい、成就したいのです。「わたしは、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。それは平和の計画であって、災いの計画ではない。将来と希望を与えるものである」(エレミヤ29:11)。
だから私たちは、断片的で小さなことを現せばよいのです。自分の人生で小さな一つの石でも置ければよい。主がすべてをつないで完成してくだいます。「平和」は「シャローム」。欠けも綻びもない、満ち満ちていること。そこから溢れ出てこぼれ落ちてきます。私たちは、それをキラッと一瞬、光を照らし出すひとしずくでよいのです。
主がそのひとしずく、一滴一滴を、満ち満ちたものにしてくださいます。だから今、「大いに喜びなさい」という主の言葉によって、大いに喜べます。「天には大きな報い」、想像を超えた喜びの完成があるからです。
説教一覧(2023年度)
2023.4.2
霊で祈り、理性で祈る
2023.4.9
あなた方に平安あれ
2023.4.16
全生涯続く喜び
2023.4.23
秩序と平和の神
2023.4.30
熱意とバランス
2023.5.7
神の恵みが現れた
2023.5.14
何を求めているのか
2023.5.21
最も惨めな者
2023.5.28
アッバ、父よ
2023.6.4
一人の一人による新しい命
2023.6.11
裁くことからの自由
2023.6.18
聖霊によって語り、聞く
2023.6.25
復活の希望による力
2023.7.2
最後のアダムは命の霊
2023.7.9
死よ、お前に勝利はない
2023.7.16
伝道の幻と戦い
2023.7.23
天地を結ぶ
2023.7.30
雄々しく、強くあれ
2023.8.6
マラナ・タ
2023.8.13
憐みに胸を痛める神
2023.8.20
イエス・キリストの系図
2023.8.27
イエス・キリストの誕生
2023.9.3
あの方の星に導かれて
2023.9.10
希望への退避
2023.9.17
天の記録
2023.9.24
神が近づいた
2023.10.1
壮大な業の開始
2023.10.8
神の前に一人で立つ
2023.10.15
悪魔に対抗する道
2023.10.22
メシアの伝道
2023.10.29
神の国は進む
2023.11.5
イエスに従う者たち
2023.11.12
神の義と愛
2023.11.19
神の愛に包まれた者
2023.11.26
主の奇蹟の時
2023.12.3
大いに喜べ
2023.12.10
ヒゼキヤの信仰
2023.12.17
地の塩、世の光
2023.12.24
飼い葉桶のメシア
2023.12.31
神の国に入る者
2024.1.7
なぜ腹を立てるのか
2024.1.14
永遠なる御父の宮
2024.1.21
祝福された関係
2024.1.28
主の真実を信じる
2024.2.4
太陽を昇らせ、雨を降らせ
2024.2.11
安心して行きなさい
2024.2.18
人の報いと神の報い
2024.2.25
あなたが祈るときには
2024.3.3
天の父よ
2024.3.10
いのち注ぐ恵み
2024.3.17
神の国を味わう
2024.3.24
十字架の神の御名
2024.3.31
そこで私に会うことになる