十字架の神の御名
説教要旨(3月24日 朝礼拝)
マタイによる福音書 6:9
牧師 藤盛勇紀
一般に「名は体を表す」と言いますが、その名で呼ばれるものの実体、実質を表します。私たちが誰かの名前を呼ぶ時、その人の全存在を呼んでいます。ただ、私たちが人の名前を呼ぶとき、その人のイメージや理解を持って呼びます。では、神を呼ぶ時はどうですか。様々な呼びかけ方がありますが、どんな神を呼んでいるのか、人それぞれでしょう。「天のお父様」と「御在天の父なる御神様」ではかなり違います。「あなたの神の名は?」と訊かれたら、案外分からないと思われるでしょう。
イスラエルの歴史は「神の名」を問う歴史でもありました。「イスラエル」と呼ばれたヤコブは、「ヤボクの渡し」で独り、精神的格闘をしました。その時、何者かがヤコブと夜明けまで格闘します。その人は「お前の名は何というのか」とヤコブに尋ね、「ヤコブです」と答えると、「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。お前は神と人と闘って勝ったからだ」と言いました。「イスラエル」の名の由来です。ヤコブが「どうか、あなたのお名前を教えてください」と願っても、その人は教えてくれませんでした。
やがてイスラエルの一族はエジプトに下り。400年もの間奴隷とされます。そのイスラエルの民を導き出す使命を与えられたモーセは、神の名を問いました。その時、神はモーセに答えられました。「わたしはある。わたしはあるという者だ」。不思議な名です。英語にすれば"I am that I am"。大事なのは"I am"の次です。人間なら、「私は○○です」と名前なり説明する言葉を入れますが、神はこの世の何かで説明され得る方ではありません。"I am"の後に何を入れても全く足りません。「神は誰なのか、どんなお方なのか」。それは長い歴史の中で問い続けられ、経験されて行くしかなかったのです。まさに、「イスラエル」とは、神と格闘し、取っ組み合うことです。
それが旧約の時代。時が満ち、生ける神の子メシアが世に来られ、このお方イエスにあって、神が誰なのか、どんなお方なのか、すなわち「神の御名」が知らされたのです。
イエス様は、「私を見た者は父を見た」「私が父の内におり、父が私の内におられる」と言えるほどに、父ご自身の現れでした。だから、イエスを知ることは神を知ること、イエスを呼ぶことは神を呼ぶことです。イエス様の誕生は、「その名はインマヌエル(神は、我々と共におられる)と呼ばれる」との預言の実現でした。神が「インマヌエル」であることが、イエス様にあって表されたのです。
私たちはイエス様に結ばれて、神がどんなお方なのかを味わい知ります。だからパウロは、この方において私たちは神との間に平和を得ている、神と和解させていただいていると語りました。神が「インマヌエル」だとは、「神は私たの味方」だということです。「御子をさえ惜しまず死に渡された方は、御子と一緒にすべてのものをわたしたちに賜らないはずがありましょうか」。まさに「万事は益」です。
この恵みは、イエスを信じた者だけが知る恵みです。問題は、誰が信じ得るか?です。
預言者イザヤは、神からメシアの姿を啓示されましたが、それは「苦難の僕」でした(53章)。だからイザヤは言うのです。「わたしたちの聞いたことを、誰が信じ得ようか」と。
実際、世に来られたメシアは「軽蔑され、人々に見捨てられ、無視され」、ボロ雑巾のように血祭りに上げられました。メシアの受難。神はあのお方においてご自身を現されました。神は、ご自分の正体を表してしまい、手の内を明かしてしまい、惜しみなく最後の切り札を切ってしまわれたのです。するとどうなるか?人はその「名を崇める」のでなく、侮るのです。
それが分かっていて、神は永遠の高さからこの地へと下り、埃にまみれ、罪にまみれた人として殺されるのです。このお方が、「御名があがめられますように」と祈れと教えられました。この十字架につけられたお方を信じて応える者だけが、インマヌエルの神を経験します。「御名が崇められますように」と祈りながら、イエスに結ばれた自分の内にその恵みを味わって行くのです。
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