祝福された関係
説教要旨(1月21日 朝礼拝)
マタイによる福音書 5:27-32
牧師 藤盛勇紀
「姦淫するな」の戒めに関して、キリスト教は情欲・性欲・肉欲を否定しているか、などという議論もあると思いますが、聖書はそうした人間の欲を否定していません。イエス様は同じ言葉を繰り返されます。「あなたがたも聞いているとおり、昔の人は、…と命じられている」。21節でも次回の33節でも、38節、43節で繰り返されます。聖書に記された律法と、その律法を守るために、昔から言い伝えられた口伝律法です。しかしイエス様は、「しかし、わたしは言っておく」と、律法で命じられることの真意、律法に表された神の御心を示されたのです。
それを理解するための大原則があります。「神は外に表された人の行いではなく、その人の内面、心を見られる」ということです。だから、行いによっては義とされず、救われないのです。神は心をご覧になるからです。
前の箇所では「殺すな」との律法について触れられました。律法は、殺人という行為を問題にします。しかしイエス様は、心の中で「兄弟に腹を立てる者」は裁きを免れない、と言われるのです。今日の箇所でも、「みだらな思いで他人の妻を見る者はだれでも、既に心の中でその女を犯した」と言われます。
神は心の中をご覧になる。それで、ある人は「性欲、肉欲そのものが罪なのだ、悪なのだ」と考え、何とか心から切り離そうと、修行のような精神的な戦いを自分に強います。しかし神は、性欲を否定したり、罪悪としてはおられません。神は肉を持った人間を造られました。私たちのこの体には食欲、性欲、睡眠欲が当然にあります。それを捨てたら人間は滅びます。ただ、そうした欲望は際限が無くなることがあります。
肉欲を完全に絶とうとすることも、肉欲に従おうとすることも、神がお造りになった人間に求めておられることではありません。主なる神が人を造られたとき、神は人に対して、命じられました。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」。神は人を、地を従わせる者、支配する者とされたのです。世に《支配されるもの》ではありません。
人類最初の兄弟の兄カインは、神を礼拝している時に弟アベルと神に対し、激しい怒りを抱きました。その時、神はカインに言われました。「罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない」。
私たち人間は、神のかたちに造られた神の作品です。神以外のものに支配されてはならないのです。しかし、私たちが肉欲に自分を支配させてしまう時、私たちは自分をも他者をも傷つけ、破壊することになります。
「みだらな思い」で人を見るとき、まさに罪が戸口で待ち伏せています。私たちはそれを支配しなければなりません。「目」は、罪に支配されて生きる道への入り口。「手」は、入って来たものを具体化させる道具、道です。
性欲に限らず、欲望が出てくるのは当然で必要なことです。しかし、それをどこに位置付けるのか。ルターは、鳥が私たちの頭の上を飛ぶのは止められないが、鳥が私たちの頭に巣を作るのは止められる、と言いました。欲が生まれるのは自然で、必要です。しかし、それに自分を支配させるなというのです。欲に支配されてしまった時、私たちは、人間としてあるべき健やかな生き方を保つことができなくなり、むしろ自分や他者を破壊してしまいます。それは、命を失うことです。
人間は、神の愛と憐れみと慈しみのもとで、その愛を現す「かたち」に造られました。それは「男と女」だったと聖書は語ります。そして神は、「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ」と祝福し、使命を与えられました。この、本来神に祝福され、神に造られた人としての生き方を取り戻すために、キリストは人となって来られました。この方は、律法による裁きをも十字架で負ってくださいました。だから私たちは、律法の裁きを恐れて従うのでなく、赦しと祝福のもとに、安心して、律法に表された神の願いに向かって生きることができます。
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