そこで私に会うことになる
説教要旨(3月31日 イースター礼拝)
マタイによる福音書 28:1-10
牧師 藤盛勇紀
イエス様が十字架で死なれた後、弟子たちはどこで何をしていたのか。ある弟子たちは、恐れて家の戸に鍵を掛け息を潜めていました。ところが、婦人たちから不思議な知らせを受けます。イエス様が復活され、「ガリラヤへ行け」と弟子たちに命じておられるというのです。週の初めの日の明け方、何人かの婦人が墓に向かいました。イエス様は十字架で処刑され、ご遺体を措置する暇もなく墓に納められました。せめて主のご遺体に香料を塗って差し上げたい。でも、墓を封印している大きな石をどうするのか、そんなことも考えられないまま、ただ墓に向かったのでした。
ところが、思いもしないことが起こります。「番兵たちは、恐ろしさのあまり震え上がり、死人のようになった」。婦人たちはなおさらでしょう。イエス様が処刑されたのはつい数日前です。婦人たちは、空しく流れる時の中に置かれていました。マグダラのマリアはかつてイエスと出会い、「このお方のもとでなら人生をもう一度やり直せる。新しく生きられる」と信じて主に従って来た人たちの一人です。しかし今、その方の墓を訪ねなければならない。
ところが、この失意の中で、突然天使が近づき、一気に語るのです。「急いで行って、弟子たちにこう告げなさい。『あのかたは死者の中から復活された。そして、あなたがたより先にガリラヤに行かれる。そこでお目にかかれる。』確かに、あなたがたに伝えました」。イエスが復活されたという仰天ニュースを一息で告げてしまいます。「えっ何?ちょっと待って」と言う隙も与えません。「婦人たちは、恐れながらも大いに喜び、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った」。恐れているのか喜んでいるのか、何が何だか分からない。ただ、なぜか恐れを内から押し破るように喜びが満ちてくる。突然、イエスご自身も現れ、「おはよう」。「えっ!『おはよう』?」。彼女たちは混乱します。もちろん主は彼女らの悲しみも恐れも不安もよくご存じです。しかし、イエス様も彼女たちを急かします。
この数日、時間が止まったようだった。そこに突然、無理に急かして行かせようとする力が迫って来ます。弟子たちも婦人たちも、何が何だか分かりません。ただ「もう一切が終わった」と思っていた。いや、違う!主は「行け!」と言っておられる。
弟子たちは、イエス様が復活された事実を喜んで、希望に満ちてガリラヤに向かったわけではなく、何が起こっているのかも理解してもいません。複雑な思いが交錯し、言い様のない重い罪責感や不安が募ります。主を最後に見たのは、自分たちが主を見捨ててしまった時。あの時から、弟子たちは裏切り者、臆病者の集団となったままです。彼らの魂の破れと傷は、全く癒やされていません。
生きておられる方は私たちを混乱させます。そもそも復活なんて信じられない。しかし主はそんなことお構いなしです。このお方に迫られた時、私たちの内には疑いや不思議な思いが渦巻きます。「そんなことがあるのか…」。
しかし、そこで一気に疑わしくなります。今まで疑ったことのなかった「死」が疑わしい。「死んだらお終い」「死ねば全てが無意味とは言わないが、全ては不確かではないか」。それも疑わしい。全てを不確かに不安にし、希望を失意にしてしまう死。その力は本当か?そもそも、本当の死があるのか?
主は急かします。「そんな所に留まっているな!」。主があなたを行かせようとしておられませんか?死や孤独の不安や恐れがあるでしょう。もしあなたが孤独だと感じているとすれば、あなたが孤独だからではありません。あなたが主を独りぼっちにしているのです。
私たちがついに出会うもの、不意に出会うものは、死や孤独ではありません。私たちを生かすために、主は先回りし、待っておられます。主は今あなたに用があります。あなたが必要だから、招いておられます。生きている方の言葉が迫って来るのを感じたら、まずは応えてみませんか?主が生きておられることを本当に知った人は、主の言葉に応えてみた人たちだけです。「行きなさい。そこで会おう」。
説教一覧(2023年度)
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