主の真実を信じる
説教要旨(1月28日 朝礼拝)
マタイによる福音書 5:33-37
牧師 藤盛勇紀
「一切誓うな」。なぜだろうと思う人は少なくないでしょう。教会では多くの場面で誓約をするからです。一般の社会でも多くの場面で誓約をします。背いた場合は、相応の責任が問われ、処罰されることもあり、約束を誠実に果たさせる手段が考えられています。
ユダヤの社会でも、約束の真実さをどう担保するか、いろいろ規定がありました。「しかし、わたしは言っておく」と、イエス様は律法の新しい解釈を示されます。「一切誓いを立ててはならない。天にかけて誓ってはならない。…地にかけて誓ってはならない…」と。ユダヤ人は「主の名をみだりに唱えてはならない」という戒めを犯すことを恐れて、「主」「神」という言葉を口にしませんでしたが、約束を果たせなかった時のために、「私は神の御名を持ち出してはいません」という言い逃れを初めから用意していたのです。
イエス様はそんな誓約の空しさを指摘しておられます。天やエルサレムを持ち出そうが、自分の誠実にかけようが、神の御前で誓っていることに何ら変わりはないのだということです。誓った言葉は神がご存じです。
では、「一切誓うな」とは、私たちの約束などどうせ不誠実なのだから、ということなのでしょうか? イエス様がおっしゃるのは、あなたの約束は、あなたがどこでなそうとも、神が聞いておられるということです。そこであなたは自分の真実さを主張できるのかと。あなたの約束など、どうせ空しく不真実なのだから、無駄なことはやめよ、ということではありません。むしろ、あなた方は神の前に生きる者なのだから、神の前で、神に対して真実であれ、と主は願っておられます。だから「あなたがたは、『然り、然り』『否、否』と言いなさい」。然りは然り、否は否とする。その当たり前のこと。そこに留まって、それ以上に自分で何か言い逃れを考えたり、何か保証を求めようとすることは止めよ、と。
「然り、然り」「否、否」という言葉から、パウロの言葉を思い起こす人もいるでしょう(⇒2コリント1:17~20)。「このような計画を立てたのは、軽はずみだったでしょうか。それとも、わたしが計画するのは、人間的な考えによることで、わたしにとって『然り、然り』が同時に『否、否』となるのでしょうか」。
コリントの信徒たちと使徒パウロとの間には相当深い誤解や行き違いがありました。それは結局解決されたわけではありません。パウロ自身はいつも真実であろうとしましたが、彼は自分の真実さによって信用を勝ち得ようとはしませんでした。こう言うのです。「神は真実な方です。だから、あなたがたに向けたわたしたちの言葉は、『然り』であると同時に『否』であるというものではありません」。自分が真実だからではなく、神は真実な方、「だから」と言うのです。パウロが福音宣教者として務めを果たしていく、その拠り所は、自分の真実さや自分が勝ち得た信用などではなく、「神は真実な方」、このお方なのです。自分を信用してほしいと願ったのではなく、この方キリストに、コリントの信徒たちの心も向かってほしい。それだけでした。
イエス・キリストにおいては「然り」だけが実現しました。この方に結ばれた者には、神からの肯定だけが実現しました。言い換えれば、私たちには祝福だけが実現したのです。神の「否」である「呪い」は、イエス様の上に下されたからです。
この神の大いなる「然り」によって、たちは肯定され、捕らえられています。だから、私たちも真実でありたい、自分をも他者をも「然り」と肯定したいのです。パウロが言うように、私たちはキリストにあって「アーメン」(然り)と唱えます。
主からの務めを負うような重要な場面で、自分の真実でそれを果たすことを約束すれば、嘘や偽りになってしまうでしょう。だから、神の真実によって誓約するのです。互いにキリストに結ばれた者たちだから誓約をし、「アーメン」と応え、その務めに召された人々のために教会は祈り続け、誓約した者は主の真実によって、祈り支えられるのです。
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