キリストの体を現す交わり
説教要旨(7月17日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 5:9-13
牧師 藤盛勇紀
ここでパウロが言う「みだらな行い」は、教会の中で「兄弟」と呼ばれる人たちの間での問題です。パウロがわざわざ「兄弟と呼ばれる人」と言うのは、そうは呼ばれているが実際は兄弟とは言えない人、形の上では洗礼を受けたクリスチャンだが、その実、キリスト者とは言い難い人のことです。「みだらな者、強欲な者、偶像を礼拝する者、人を悪く言う者、酒におぼれる者、人の物を奪う者」と例示されますが、「強欲な者」は「より多く持とうとする者」との意、「偶像を礼拝する者」は、あからさまな偶像礼拝ではなく、手紙の後半でも取り上げられますが、明らかな異教的な儀式や習慣から抜けられない人のことです。であれば誰も「私は関係ありません」とは言えないでしょう。「酒におぼれる者」とは、単なる酒飲みの問題ではなく、手紙の後の方で取り上げられますが、コリント教会で礼拝で聖餐式が行われる時、そこにすでに酔っ払っている者たちがいるという有り様でした。そうしたことが信徒たちの交わりを破壊し、教会を分断・分裂させていたのです。それがパウロの本当の痛みなのです。
そのような者たちとは「つきあうな、そのような人とは一緒に食事もするな」と言います。ふだんの食事も一緒にするなと言うのですから、ましてキリストの体と血に与る聖餐の交わりを共にはできません。
2節では、「むしろ悲しんで、こんなことをする者を自分たちの間から除外すべき」と言われていました。キリストの教会として措置すべき問題だということです。
現代でも、聖餐の交わりから遠ざける措置が執られることがあります。「戒規」といいますが、英語ではdiscipline(訓練)で、自分がキリストに愛されている弟子(disciple)であることを思い起こして、立ち帰るための指導です。
「自分たちの間から除外」し「一緒に食事もするな」と言うのも、その人を一旦遠ざけることによって、彼が自ら立ち帰るようにさせるのです。物理的な排除ではなく、聖餐の交わりに共に与らせないことなので、本人が礼拝に参加するのはよいのです。
聖餐の交わりから遠ざけられている人との付き合い方は、簡単ではありません。やはり距離を置おくべきでしょう。2テサロニケ3:14では、「特に気をつけて、かかわりを持たないようにしなさい」と勧められています。「気をつけて」、しかし「かかわりを持たない」のが賢明です。
「あなたがたの中から悪い者を除き去りなさい」とは、申命記からの引用ですが、申命記では「悪を取り除け」とあります。神の民としての清さやを保つことですから、この世の価値観や善悪の基準に照らしての清さではなく、あくまでも「キリストの血による清さ」です。キリストの血によって何がなされたのか。私たちはただ主イエスの尊い血によって、完全に赦された者、神に愛され、迎え入れられている者です。この恵みの事実を確かめることです。
それは簡単なことではありません。しかし、コリント教会のように、恥ずべき事があっても責めもせず、「まあまあ」「なあなあ」でよいのではありません。なし崩し的な付き合いはキリストの恵みを無駄にし、結局、自分が何によって生きているか分からなくなります。パウロの願いも、キリストの恵みによって生きることへ立ち帰ってくれることです。この恵みをまだ知らない人たちには、キリストのもとに来てほしい。それをするのは、教会しかないのです。
私たちがこうして集まり、誰もがここに招かれているのはなぜでしょうか。私たちの内に正しい者など一人もいません。私たちは皆、罪業深重。神はそんな私たちに、最も尊いものを与え尽くしてしまわれました。その恵みを思うとき、ただ言うしかありません。主よ、あなたが流された血、あなたが注ぎ出して、私たちに惜しみなく与えてくださった、あなたの尊い命の故です。
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