自分をわきまえる
説教要旨(1月15日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 11:27-34
牧師 藤盛勇紀
「主の晩餐」(聖餐式)にどう与るべきか。パウロは「自分をよく確かめたうえで」食べ飲むべきと勧めます。「ふさわしくないままで主のパンを食べたり、その杯を飲んだりする者は、主の体と血に対して罪を犯すことになります」。パンと杯は、私たちのために裂かれた主キリストの体、私たちのために流された主の血。それによる「新しい契約」です。「ふさわしくない」とはどういうことなか。もし、自分は罪深い者、信仰の弱い者だから相応くない、聖餐に与る資格はない、などと考えるとしたら、とんでもない思い違いです。主の恵みを思わず、自分で自分を内省して、自分を吟味したつもりになっているだけです。
信徒はしばしば集まって共に食事をし、そこで主の晩餐も行われたのですが、「お互いの間に仲間割れ」(18)があり、聖餐まで混乱していました。「各自が勝手に自分の分を食べてしまい、空腹の者がいると思えば、酔っている者もいるという始末」(21)でした。聖餐に与る相応しさについて、「主の体のことをわきまえずに飲み食いする者は」とある通り、問題は「主の体のことをわきまえ」ることにかかっています。主の体をわきまえず、また自分をわきまえることもないと、「主の体と血に対して罪を犯す」ことになる。「主の体と血」は、私たちの罪を贖うために裂かれた主の体、主が流された血です。それをわきまえることは、主が体を裂き血を流してくださった自分をわきまえ知ることです。
この恵みを受け取っていることが求められています。主の血による「新しい契約」の内容については前回確認しましたが、私たちがひとりの神の一つの民とされ、神の民への福に私たちも入れられ、さらに一人一人に主の霊が注がれて、自らの内に恵みを確かめることができるのです。だから聖餐は信仰告白をした者たちによってなされます。この恵みを信じていただいていなければ、聖餐はただの食事に過ぎないからです。
主の晩餐が単なる食事。そんな事態に対して「自分をよく確かめたうえで、そのパンを食べ、その杯から飲むべきです」と勧められています。よく確かめるとは、精錬による純粋さですが、「清く、正しく、信仰深く生きている」といったことではありません。私のために御子が体を裂き血を流された、それは私がまだ罪人だったときになされ、ただ恵みによって差し出されていた(ローマ5:6~9)。私は何の相応しさも資格もないのに、このお方を自分の体をもって味わう。純粋さを言うなら、キリストの恵みへの純粋さであり、ただ、恵みをいただくだけの信仰です。
自己吟味とは、主が私をどうしてくださったのかを確かめなることです。イエスが罪人とされ、神を冒瀆した者とされ、呪いとなってしまわれ、この私には神の命が与えられ、祝福の内に入れられた。私はただこの方によって救われている、という信頼です。
ところが、コリント教会ではそんな主の晩餐の意味などそっちのけでした。そんなことはどうでもいいじゃないか、と。それは、キリストの恵みも救いも自ら捨てるようなものです。まさに「自分自身に対する裁きを飲み食いしている」と言われる通りでしょう。
「そのため、あなたがたの間に弱い者や病人がたくさんおり、多くの者が死んだのです」。こうした状況自体が主の裁きだというのではありません。金持ちは金持ちで勝手なことをし、貧しい人々は極度の貧しさの中で侮辱されていただけでなく、体が弱ったり病気だったりしても、放置されているような現実です。主の晩餐の混乱は、教会の混乱、破壊です。その現状が「弱い者や病人がたくさんおり、多くの者が死んだ」という悲惨な状態にまで至っていたということでしょう。
聖餐式の度に思い起こしたいのです。罪人をどこまでも追い求める主の底知れない憐れみ、罪人のために死なれた主の計り知れない愛に包まれている私たちだと確かめるのです。そんな自分だと知る者が、聖餐に与ります。相応しさの根拠は、私たちの内にあるのではなく、ただ主の愛と恵みにあるのです。
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