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神に遣わされた人

説教要旨(8月14日 朝礼拝より)
ヨハネによる福音書 1:8-15
牧師 星野江理香

 「神から遣わされた一人の人がいた。その名はヨハネである」(6節)。この「ヨハネ」が、洗礼者ヨハネであることは、少し後の15節に、洗礼者ヨハネの言葉として知られている「わたしの後から来られる方は、わたしより優れている」が記されていることから明らかです。また7節と15節をみると、ここでは彼が、主イエスが待望のメシアであることを指し示す「証し人」の一人として立たされていたということがいえると思います。この福音書を通して神様は、「洗礼者」としてより「証し人」としてのヨハネに、私たちの目を向けさせようとしているようです。
 私たちには、ヨハネは主イエスのために遣わされた者であるとの考えがありますが、その働きは、純粋に主イエスのためだったわけではないように思います。たとえば、本福音書の第5章で主イエスは、「わたしについて証しをなさる方は別におられる。そして、その方がわたしについてなさる証しは真実であることを、わたしは知っている」と言われ、また「わたしは、人間による証しは受けない」と仰っているように、主イエスが神であり給うことを証明できるのは御父なる神様だけです。私たちもそうですが、私たちが、主イエスが神のみ子である科学的証拠を提示したり、徴を見せたりするのが難しいように、ヨハネ自身もそのようなことはしなかったということです。つまり、証し人ヨハネの場合は、長年神様がみ心にかけてきた、頑なな神の民イスラエルのための備えがその役割の中心であったということではないでしょうか。その時代の、本来の信仰から外れてしまったイスラエルの人々のために、また本文書の7節によれば、そうして「すべての人が彼によって信じるようになるため」にヨハネは遣わされたのでした。
 そうであれば、私たちは皆、ヨハネという証し人を起点として、主イエスとの出会いをいただいた者たちだということになると思います。そして、幾世代にもわたり、国も人種も越えて、主イエス・キリストの福音伝道のみわざに参与してきた…共に与って来たと、いえるのではないでしょうか。それはまた、2000年もの時を経て、ここにいる私たちも主イエス・キリストを示すための証し人として召されているからにほかなりません。当時のイスラエルの人々の多くがヨハネを通して主イエスを知ったように、私たちを通して、主イエスとの出会いを与えられる人たちが、きっと今も私たちを待っているのです。
 もっとも、私たちがヨハネと同じになることはできませんしありません。でも、だから証し人になれないというわけでもありません。キリスト者には聖霊が与えられているのですから、聖霊の御導きと御働きで、私たちは誰もが証し人となることができるのです。不器用であってもいい、たとえ失敗しても諦めないでほしいのです。主イエス・キリストの贖いの恵みの中にある私たちの幸せな気持ちが伝わるだけでも、自然と証しができるはずです。ヨハネが遣わされたのは、頑ななイスラエルの人々に彼が必要だったからですが、私たちは皆がそれぞれ誰かのために遣わされています。だから同じでなくていい、だからこそ教会には、様々な人が召し出されているのです。
 私たち人間は、疑い深かったり、自分の目で見て手で触れられるモノ、お金のように数えられるモノしか容易に信じなかったりするところがあります。だからこそ、みことばと共に聖餐の恵みと、また時に、目に見える兄弟姉妹たちの温かい手や微笑みを必要とするのではないでしょうか。そこにはもちろん、人間の目には見えない聖霊の御働きがあります。そして私たちは、親しい人たちの手から手へ、或いは親から子、祖父母から孫へと信仰をつないでいきたいのです。私たちに主を指し示してくれた誰かが、私たちにとって神様から「遣わされた人」であったように、私たちも誰かのための「神様から遣わされた者」なのです。

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