新しい契約
説教要旨(1月8日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 11:23-26
牧師 藤盛勇紀
聖餐式で制定語として聞いている言葉です。「主イエスは、引き渡される夜、パンを取り、感謝の祈りをささげてそれを裂き、『これは、あなたがたのためのわたしの体である。わたしの記念としてこのように行いなさい』と言われました」。主が裂いたパンは、私たちのために裂かれる主の体を意味します。「この杯」と言われたのも、そのカップではなく、主が流す血と、それによって立てられる「新しい契約」です。
過越の食事での杯は4回あり、「この杯」とは、食事の後の「贖いの杯」と呼ばれる杯でした。私たちの罪の贖いのために流される主の血。それは「新しい契約」だと言われました。エレミヤの預言の成就です。「見よ、わたしがイスラエルの家、ユダの家と新しい契約を結ぶ日が来る、と主は言われる」(31:31)。「新しい契約」に対し「旧い契約」があるわけですが、旧約聖書にはいつくかの重要な契約があります。まずは「アブラハム契約」とも呼ばれるアブラハムへの祝福です(創12:2-3)。あの祝福とアブラハムの旅立ちからイスラエル民族の歴史が始まります。
後にエジプトで奴隷となったイスラエルは、主なる神の働きによって解放され、モーセに導かれて約束の地を目指します。その途中シナイ山で神から戒めを受けます。神の民として歩むようにと、十戒を初めとする教えと戒め、律法です。モーセは民に全ての言葉を読み聞かせると、民は「私たちは、それをすべて行います」と約束しました。その時、モーセは犠牲の献げ物の血を民に振りかけて言いました。「見よ、これは主がこれらの言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血である」(出24:8)。「これは…契約の血」。この表現をイエスは用いました。ご自身が流す犠牲の血による契約が立てられるからです。
エレミヤが語ったように、シナイ契約はイスラエルによって破られ、その結果イスラエルは分裂し、滅亡します。その絶望的な様をエレミヤは目撃します。しかし、主は言われます。「見よ、わたしがイスラエルの家、ユダの家と新しい契約を結ぶ日が来る」。その時にどうなるのか。「わたしの律法を彼らの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる。そのとき、人々は隣人どうし、兄弟どうし、『主を知れ』と言って教えることはない。彼らはすべて、小さい者も大きい者もわたしを知る」(31:33-34)。
「新しい契約」は、ひとりの神の一つの民とされた事実が確かめられるような契約です。石板に記された契約と違い、信じる者一人一人の内に確かめられる、主の憐れみ深い恵み。それはアブラハムを基とした祝福の実現です。「地上の氏族はすべて、あなたによって祝福に入る」。この祝福は初めから地上の全氏族、異邦人にも及ぶことが約束されていたのです。
私たちも異邦人で、血筋もアブラハムの子孫ではなく、何の関係もありませんでした。しかし、イエスが十字架につけられ、血を流して命を捨てられたことによって、驚くべき「新しい」ことが起こりました。パウロはガラテヤ書で、キリストは十字架にかけられて、私たちのために「呪い」となったと言います。「それは、アブラハムに与えられた祝福が、キリスト・イエスにおいて異邦人に及ぶためであり、また、わたしたちが、約束された“霊”を信仰によって受けるためでした」(3:14)。
私たちは信仰によって聖霊をいただいて、分かったのです。御子が呪いとなられ、アブラハムとはとは無関係だった私も祝福されている。この憐れみに満ちた真実を、聖霊によって自分の内に確かめる者とされたのです。
「あなたがたは、このパンを食べこの杯を飲むごとに、主が来られるときまで、主の死を告げ知らせるのです」。主の晩餐は、私たちの罪の贖いのために主が肉を裂き血を流されたことを、世の人々に告げ知らせることでもあります。それは悲しい知らせではありません。主の死によって新しい命に入れられた喜びの知らせであり、悲しみに浸る食事ではなく、御国の祝宴を先取りした祝いの宴です。
説教一覧(2022年度)
2022.4.3
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2022.4.10
主がお入り用なのです
2022.4.17
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2022.4.24
命の主なる神
2022.5.1
キリストという土台
2022.5.8
出来損ないのその先に
2022.5.15
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私たちのもの、神のもの
2022.5.29
神の奥義の管理者
2022.6.5
霊の風に吹かれる
2022.6.12
言は神であった
2022.6.19
世のくずとされても
2022.6.26
信仰は言葉ではなく力
2022.7.3
悪意の種を取り除け
2022.7.10
災いの中でも働く方
2022.7.17
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2022.7.24
天使たちをも裁く
2022.7.31
神の栄光を現せ
2022.8.7
自分の体は誰のものか
2022.8.14
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2022.8.21
平和な生活を送るために
2022.8.28
神に召された者として
2022.9.4
世の有り様は過ぎ去る
2022.9.11
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2022.9.18
知ることは愛すること
2022.9.25
はじまりは全て主
2022.10.2
自由を用いる自由
2022.10.9
この世の権威の猛威
2022.10.16
福音を語る者の自由
2022.10.23
福音を告げずにいられない
2022.10.30
共に福音に与るために
2022.11.6
朽ちない冠を得るために
2022.11.13
恵みの上に恵みを受けて
2022.11.20
自立したと思うな
2022.11.27
祝福と賛美の交感
2022.12.4
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2022.12.11
荒れ地にも恵みはある
2022.12.18
自分で判断しなさい
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2023.1.1
主の食卓に集まろう
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新しい契約
2023.1.15
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神から注がれる愛の実
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信仰、希望、愛
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2023.3.26
神の言葉が分かる