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主の御用のために

説教要旨(8月7日朝礼拝より)
ルカによる福音書 19:28-40
牧師 藤盛勇紀

 主イエス一行の「エルサレム入城」と呼ばれる場面です。弟子たちも群衆も心が高揚していますが、落ち着いて見てみますと、何かおかしなところがあります。イエス様はなぜか「子ろば」に乗って入城される。預言書にもある姿とは言え、非常に乗りにくいロバの子の背に乗って、トコトコと群衆の間を進むイエス様のお姿は、何となく頼りなげですし滑稽でもあります。
 しかし、多くの弟子たちや群衆はすでに興奮状態、歓喜のるつぼです。「あのイエスが、ついにエルサレムの都に乗り込まれる、いよいよこの都で、我々の期待に応えて、この地に神の国を打ち立ててくださる」。人々は詩編の言葉を用いて、讃えます、 「主の名によって来られる方、王に、祝福があるように。天には平和、いと高きところには栄光」。
 ただ、この人々はわずか5日後には、「イエスを十字架につけろ」と叫び出し、弟子たちも皆、主を見捨てて散り散りになってしまいます。弟子たち自身、身に染みたでしょう。「先日のあの興奮は何だったのか。あの時は心から主を信じていたつもりだったが、不信仰の嘘偽りの賛美だった」。
 しかしイエス様は、群衆も弟子たちも皆裏切ることを知っていながら、「この人たちが黙れば、石が叫び出す」と、この時の賛美を肯定されたのです。なぜでしょうか。
 今日の話はこう始まっています、「イエスはこのように話してから…」。直前の「ムナのたとえ話」とつながっているのです。一人一人に、主から小さな「一ムナ」が与えられている。主に信頼してその小さなものに忠実に、大胆に用いて生きるべきことが教えられました。「このように話してから」、イエス様は子ろばに乗って入城するという、不思議な行動をとられたのです。そのために、弟子たちを使いに出されました。これは、あの「一ムナ」の話の現実化です。後で気づくことになりますが、弟子たちは実地に体験しているのです。主のお言葉に従う時、その言葉が彼らの人生となる。主の御言葉は、具体的な歴史となる。それに対して、一ムナの話にあったように、主を王として迎えたくないと思った人々は、その思いがその人の生き方となります。
 イエス様が十字架にかけられた時、弟子たちの醜い罪人の姿が暴かれました。神への賛美をもって主を喜んで迎えたあの姿は、偽りの姿だった。あの時、彼らは何もわかっていなかったのです。
 しかし、何も理解しないままで、主イエスの到来を喜び、神の国の接近に歓喜して神を賛美したのを、誰よりも主イエスご自身が肯定なさったのです。「あなたは何も分かっていなかったが、あの姿が実は本当のあなたなのだ」「神を賛美して、喜んで主に従う者の姿こそ、あなた自身も知らなかった、本当のあなたなのだ」と。
 弟子たちは、主イエスの十字架の死と復活の後に、ようやく分かりました。主の御言葉に信頼して生きた時に、どれほど驚くべき出来事があったか、どれほど喜ばしい生活があったか。それに対して、自分の正しさ、自分の信仰、自分の思いに正直になった時に、どれほど惨めだったか。あるがままの自分が、いかに悲惨だったか。
 あの時弟子たちは、不思議に思いながらも、主のお言葉を信頼して、「主がお入り用なのです」と宣言しました。「子ろばの主が、お入り用なのです」「あなたの主が、お入り用なのです」。神の御子にして救い主であられるお方が、こうしてご自分の到来の象徴にロバの子さえ用いられたように、惨めで恥ずかしい自分たちをも用いてくださって、真の命を与えてくださった。
 信仰は、自分がそのお方のものとされて、その方がくださった命を生きることです。そして、誰がなんと言おうと何がどうなろうと時がどうであろうと、断固、主のもの、神の子として生きられる恵みなのです。
 

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