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終末のしるし

説教要旨(10月16日 夕礼拝より)
ルカによる福音書 21:5-19
牧師 藤盛勇紀

 場所はエルサレム神殿です。この神殿は紀元70年にローマ軍によって完全に破壊されてしまいます。しかし当時は極めて壮大、壮麗な神殿で、金箔で覆われた所もあり、燦然と輝いていました。人々が神殿の壮麗さに感嘆していたとき、イエス様は言われました。「あなたがたはこれらの物に見とれているが、一つの石も崩されずに他の石の上に残ることのない日が来る」。
 そう言われても、想像すらできません。もしそんなことがあるとすれば、「世の終わり」の時だろう。それで彼らはイエス様に尋ねます、「先生、では、そのことはいつ起こるのですか。また、そのことが起こるときには、どんな徴があるのですか」。
 イエス様の答えは、まさに世の終わりの様相とでも言うべき悲惨な光景で、絶望的で暗い気分にもさせられる内容です。しかし主は、「惑わされないように気をつけなさい」と言われ、「おびえてはならない」とも言われます。悲惨な出来事に遭遇したり、希望を失わせる時代に入ったりすると、私たちは惑わされ、怖れおびえます。しかしそれは終わりではないのだ、言われます。
 世の終わりのことを思うと、私たちは、政治や経済がどうなるか、人々の心はどうか、自然界の変化は、異常気象はどうなるか等々、「周りがどうなるか」を知ろうとします。「どんな徴があるのか」と。イエス様はそれに対して、「これらのことがすべて起こる前に、人々はあなたがたに手を下して迫害し、会堂や牢に引き渡し、わたしの名のために王や総督の前に引っ張って行く。それはあなたがたにとって証しをする機会となる」と言われます。「周り」の様子がどうというより、「あなたがた」はこうなる、と語り始められるのです。「あなたがたは、親、兄弟、親族、友人にまで裏切られる。中には殺される者もいる」。
 なぜそんな悲惨が起こるのでしょうか。理由の一つは、「わたし(主)の名のために」です。「わたしの名のために、あなたがたはすべての人に憎まれる」とさえ言われます。主イエスの名のゆえに、つまりキリストのものとして生きようとすると、激しく揺さぶられる経験をする。この世と激しい摩擦が生まれる。そういう生活に引き入れられることになるのだ、と。
 「そんなことになったら、私の信仰など怪しいものだ」と不安になる人もいるでしょう。迫害を受けるような事態になったら、立派に信仰者として立つ自信もない。
 しかし、イエス様が「あなたがたにとって証しをする機会となる」と言われるのは、あなた自身の立派な態度や立派な弁論をもって対抗する、といったではないのです。むしろ「前もって弁明の準備をするまいと、心に決めなさい。どんな反対者でも、対抗も反論もできないような言葉と知恵を、わたしがあなたがたに授ける」と言われるのです。何と慰めに満ち、約束に満ちた言葉でしょうか。「わたしがあなたがたに授ける」と言われる、このお方に信頼して、任せてしまうことです。だから、「いざという時には、立派に立ち回ってやろう」「その時のために、言うべきことを練っておこう」などと、勢い込まなくてよいのです。
 「もう世も末」と思われるような、人の信頼も愛も冷え、まさに「民は民に敵対して立ち上がり」「友人にまで裏切られる」、そんな事態が起こったとしても、私たちは、信頼の中に安心して委ねて生きられます。私たちの主がおられるからです。だから主は「忍耐」だと言われるのです。忍耐とは、「もうお終いだ」と言いたいところで、「こんな私なんか」と思われるところでも、私のために命を捨てられた主がおられるから、「自分で自分を見限らない」ことです。この世がどんなに悲惨でも、自分でこの世を見限らないのです。だから、忍耐には、慰めがあり希望があり、滅びではなく、「命をかち取る」命の道があるのです。
 

説教一覧(2016年度)

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