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解放の時は近い

説教要旨(10月23日 朝礼拝より)
ルカによる福音書 21:20-28
牧師 藤盛勇紀

前回の箇所に続いて、「終末の徴(しるし)」についてイエス様が語られた言葉です。一連の話の始めは、エルサレム滅亡の予告でした。神の都エルサレムの神殿が、完全に崩壊する(6)。当時の人々にとって、そんなことがあるとすれば、世の終わりの時だと思われました。しかし、それは紀元70年に現実となります。「その日には、身重の女と乳飲み子を持つ女は不幸だ」(23)とありますが、ローマ軍に包囲されたエルサレムでは、食糧が尽きて自分が産んだ赤ん坊をさえ食べたというのです。そうした地獄の惨劇がこの世には起こります。
 しかし主は言われます、「エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、その滅亡が近づいたことを悟りなさい、そのとき、ユダヤにいる人々は山に逃げなさい」と言われます。エルサレムと運命を共にするな、そこに見られるのは、「神の怒りが下る」(23)、裁きの事実なのだ、あなたがたがそれを悟ったなら、あなたは一緒にその中にいなくてよい、ということでしょう。
 悲惨はエルサレムにとどまりません。地球規模の激変とでもいうべき事態が起こり、「諸国の民は、なすすべを知らず、不安に陥る。人々は、この世界に何が起こるのかとおびえ、恐ろしさのあまり気を失うだろう」。現代の世界もこの通りです。しかし、主は「惑わされるな、おびえるな」(8,9)と言われました。これらもまだ予兆、しるしであって、本当に見るべきことは、その次なのです。「そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る」。
 「人の子」とは、世の終わりの時に救いをもたらす者が来られるという、ダニエル書に語られているヴィジョンですが、イエス様はしばしばご自分を「人の子」と呼ばれました。その「人の子」を、終わりの時に「人々は見る」というのです。だから、「身を起こして頭を上げなさい」と。
 それは、「このようなことが起こり始めたら」です。悲惨なことが起こり始めたら、人は、恐れ戸惑い、おびえてうなだれます。しかしそこで「頭を上げよ!」と言われるのです。なにをうなだれているのか、あなたがたの解放の時が来ているのだ。
 戦争や地震、飢饉や病気、天の異象や社会的混乱、それはいつの時代でも「起こるに決まっている」と主は言われました。人はすぐに忘れてしまいますが、最後まで持ちこたえる確かなものなど何もないのです。この目が見ているものは、必ず失われます。それを思い知らされて、うつむきそうになる時にこそ、「身を起こして頭を上げよ」と主は言われます。解放の時、救いの時が近いからです。
 たしかに神は全てを裁かれます。私たちも自分を罪なしとすることはできませんが、その時こそ「解放の時」「救いの時」「贖いの時」なのです。私たちが裁かれる時、そこには、私たちの罪のために御自分を献げて、血を流してくださった「人の子」イエスがおられるからです。このお方がおられるなら、私たちは何を恐れ、うなだれることがあるでしょうか。
 今もなお、地上から戦争が絶える気配はありませんし、大地震も次々起こり、火山も噴火し、不安が去ることはありません。しかし、頭を上げましょう。救いは遠ざかっているのではなく、近づいているからです。世界がどのように見えようとも、どのようなかたちで私たち自身の人生が終わろうとも、それは「終わりではない」のです。主がおられるからです。私たちは、顔と顔を合わせて主とまみえるまで、決してお終いはありません。何があっても、決して終わらない。「私を信じる者は、たとえ死んでも生きる。あなたはそれを信じるか」と主は言われました。たとえ死んでも生きる。私たちの終わりは、解放の時、救いの完成、主と共にある喜びの時だからです。
 

説教一覧(2016年度)

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