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何による一致か

説教要旨(1月30日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 1:10-17
牧師 藤盛勇紀

 パウロが去った後のコリント教会では、仲たがいが起こっていました。「私はパウロにつく」「私はアポロに」「私はケファに」「私はキリストに」という分派争いです。コリント教会の基礎を造ったパウロを慕う人は少なくなかったでしょう。アポロもエフェソで伝道し、後にコリントに来ました。「アレクサンドリア生まれのユダヤ人で、聖書に詳しい、雄弁家」(使徒18:24)。教養あふれる説教をしたのでしょう。「ケファ」とはペトロ。ガリラヤの漁師で教養とは無縁でも、イエスの一番弟子的な存在で、エルサレム教会での権威。漁師としての素朴な人柄も、アポロとは違う魅力となって人々を惹きつけたでしょう。
 不思議なのは、「私はキリストに」と言うキリスト派の存在です。パウロ派、アポロ派、ペトロ派は理解はできますが、彼らも皆キリストに結ばれた者です。なのにどういうことなのか。おそらく彼らは、パウロだ、アポロだ、ペトロだと、ある教師を特別尊敬したり、自分に洗礼を授けてくれた教師を誇るような愚か者たちとは違うのだ、と言っていたのでしょう。
 そうした考えの愚かさを示すために、パウロは問います。「キリストは幾つにも分けられてしまったのですか」。私たちの信仰も救いもキリストによります。「私はパウロに、私はアポロに…」などと言いつつ、なお一人の主に結ばれているというのはおかしなことです。派閥のような信仰生活があるとしたら、すでに深刻な危機です。
 「パウロがあなたがたのために十字架につけられたのですか」。キリストは私たちの救いのために十字架につけられた神の御子。他のどんな優れた人間でもない。キリストにあっては、「私はパウロ先生に、私はアポロ先生に…」などと言うことは、何の意味もないどころか、教会に害毒をまき散らすに等しいことです。
 「あなたがたはパウロの名によって洗礼を受けたのですか」。分争の一つの原因は、「私は誰それ先生から洗礼を受けた」というおかしな誇りがあったことです。パウロ自身は、「クリスポとガイオ以外に、あなたがたのだれにも洗礼を授けなかったことを、わたしは神に感謝しています」と言います。洗礼を軽んじているわけではなく、誰から洗礼を受けたかなど問題ではないということです。「なぜなら、キリストがわたしを遣わされたのは、洗礼を授けるためではなく、福音を告げ知らせるためであり、しかも、キリストの十字架がむなしいものになってしまわぬように、言葉の知恵によらないで告げ知らせるためだから」。
 何より大事なことは、福音を告げ知らせ、人に届けることです。福音を聞いてキリストを信じたならば、誰でも洗礼を受けます。キリストに結ばれた人は、新しく創造された人です。新しい創造であり、今まではなかった「新しい人」の誕生です。
 この最も大事なことを人の思いや誇りによって空しくしてはならない。「イエス・キリストの十字架のほかに、誇るものが決してあってはなりません。…大切なのは、新しく創造されることです」(ガラテヤ6章)。キリストの十字架がむなしいものになってしまわぬように、パウロは、そして私たちも、キリストを宣べ伝えます。新しい命に与らせる福音を届けたいのです。
 私たちの主は一人、私たちはこの一人の主に結ばれて、その交わりに入れられました(9節)。すでに一つとされています。パウロが勧めるのは、一つになるよう頑張れ、ではありません。キリストに一つとされている恵みの事実に、実際生きることです。 パウロも労苦しているように、一足飛びには行きません。頑なな私たちは、主の御言葉と御霊によって砕かれ、み言葉を味わい、主を求め、祈り、尋ねて、主に応えていだくのです。この一人の主との交わりを、私たちは味わい知って行くのです。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る