豊かに蒔き、刈り取る
説教要旨(9月5日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 9:6-15
牧師 藤盛勇紀
パウロは「つまり、こういうことです」と一言でまとめます。「惜しんでわずかしか種を蒔かない者は、刈り入れもわずかで、惜しまず豊かに蒔く人は、刈り入れも豊かなのです」。「惜しんでわずかしか」とは、単に量的な少なさではなく、「差し控える・断念する」という、どちらかと言うと蒔くのを止めてしまおうかといった惜しむ心です。
私たちも様々な献金をしますが、最も大きな問題や悩みは「惜しむ」心でしょう。自分の手を見ながら、「出したくないな」「止めようか」と思う。コリント教会は最初に献金運動に手を挙げ、他の諸教会を「奮い立たせる」ほどだったのに、頓挫してしまった。
5節にも「渋りながらではなく」とあります。これは「貪欲」という言葉です。モーセの十戒の第十戒は「貪るなかれ」。隣人の所有物に関する戒めですが、身に付けるものを考えれば分かるように、所有物と密接につながる人格を守る戒めです。貪りの正体は、自分の物として支配しようとする執着です。人はあらゆるものを自分に結びつけて安心しようとします。しかし、物を所有し、支配し、蓄えることによっては、人は真の安心・平安を得ることはできません(⇒ルカ15章「愚かな金持ちのたとえ」)。
所有物にしがみつき貯め込む生き方から解放されて、神の前に真に豊かに生きる自由を知ってほしいとパウロは願っています。「豊かに」も、「祝福」という言葉です。5節の「惜しまず差し出したものとして」も実は「祝福」という言葉でした。「豊かに蒔く」とは、感謝・賛美をもって祝福しながら与えることです(⇒マタイ14:19)。
祝福は本来神のものです。自分が祝福されているから、神はその人をも祝福してくださる。その信頼と賛美をもって与えて、互いにその喜びに与るのです。
生きて働いておられる神への信頼を失った、惜しむ心が貪欲です。豊かに養ってくださる神を忘れ、「これしか持っていないのに、これでやれっていうのか」と神を侮る。それに対して「豊かに蒔き豊かに刈り入れる」とは、神の祝福の内にある豊かさです。いつでもどこでも祝福されている者(⇒申命記28章)の喜びです。
経済的に豊かなら豊かに施しができるということではありません。8章の最初にあるように、マケドニア州の諸教会は「極度の貧しさがあふれ出て、惜しまず施す豊かさになった」のです。極度の貧しさの中でも満ち満ちて、溢れ出る。神が与えてくださるからです。神の祝福の内に豊かに蒔く人、祝福によって行う人は、神の祝福を味わいながら生きます。
だから「各自、不承不承ではなく、強制されてでもなく、こうしようと心に決めたとおりにしなさい。喜んで与える人を神は愛してくださるからです」と言うのです。神に愛される条件を言っているのではありません。「喜んで与える人」は、自分が神から愛されている事実の豊かさを知っているのです。「あなたがたは、わたしたちの主イエス・キリストの恵みを知っています。すなわち、主は豊かであったのに、あなたがたのために貧しくなられた。それは、主の貧しさによって、あなたがたが豊かになるためだったのです」(8:9)。
ここまで続いた献金の話の核心も、私たちがキリストに結ばれ、キリストの恵みと神の愛に生きていることを明らかにすることです。それで「神は、あなたがたがいつもすべての点ですべてのものに十分で、あらゆる善い業に満ちあふれるように、あらゆる恵みをあなたがたに満ちあふれさせることがおできになります」と言うのです。
神は「種を蒔く人に種を与え」てくださるお方です。神が、種を与え・増やし・成長さえてくださいます。私たちは自分の手の中にあるもによってではなく、溢れ出てくるもので生きるのです。「言葉では言い尽くせない贈り物について神に感謝します」。
説教一覧(2021年度)
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