新しい人の創造
説教要旨(5月30日朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 5:13-21
牧師 藤盛勇紀
日本を代表する作家のOさんが、あるテレビ番組で自身のテーマである「新しい人」について語りました。聖書のエフェソ書に出てくる言葉で、キリストのことなのだと言い、自分はこの「新しい人」の現れを期待している、しかも「全く恵みとしてやってくる」「祈りの中で待つ」のだと言います。ただ、「自分はクリスチャンの一歩手前の所で考え、表現したいのだ」とのことでした。私もかつてキリスト信仰の一歩手前で立ち止まって外から手を伸ばすような時期がありました。クリスチャンになってしまうと、普通でなくなるというか《別の世界へ》行ってしまうような気がして恐いからです。
しかし、一歩手前にいるならば、いくら「新しい人」に期待をしても、残念ながら、その「新しさ」に与ることはできません。どれほど多くを学んで、様々な経験を積み、大きく成長したとしても、「古い人」は「古い人」のままです。ではどうするのか?
人目を避けてこっそりとイエスを訪ねたユダヤ教の指導者ニコデモも(ヨハネ3章)、「人は新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない」とイエス様から言われ、それを受け入れることができませんでした。聖書はこう言います。「キリストと結ばれる人はだれでも、新しく創造された者なのです」。キリストと結ばれることを避けて、自分で自分をなんとかしようとする限り、古い人のままです。ただ、ニコデモはイエス様の十字架の死の下で一歩踏み出しました。アリマタヤのヨセフと共にイエス様のご遺体を引き受けたのです。周囲のユダヤ人たちは驚愕したでしょう。「ニコデモ先生、大丈夫か? 気でも狂ったのか?」と。
パウロはこう言います。「わたしたちが正気でないとするなら、それは神のため(神に対して)であった」。《ふつうの人》にとっては、キリストと結ばれるとか神と交わるといったことは、何か「正気でない」ことのようで怖いのです。確かに、宗教は正気でない面があるので、気をつけるべきです。
「正気でない」とは、ある英訳は、"beside Ourselves"となっていました。取り乱した様子のことですが、「自分自身から外れる」といったニュアンスの言葉です。神の前では、自分からズレてしまう。ある人は、クリスチャンはエキセントリック"eccentric"だと言いました。言わば「変人」ですが、中心がズレているのです。しかしそれは、もはや《自分が中心》ではなく、《自分の外に中心がある》からです。私という存在と命の源である神によって生きる《変人》こそ「新しい人」であって、それが本来の人間なのです。なぜそうなるのか?「キリストの愛がわたしたちを駆り立てているからです」。この「一人の方」キリストが、私たち全ての者のために「死んでくださった」からだと語られます。
「ために」とは「身代わりに」。まさに「罪と何のかかわりもない方を、神はわたしたちのために罪となさいました。わたしたちはその方によって神の義を得ることができたのです」。私たちは罪とその呪いから解放され、神との関係が回復されています。だから神の前に生きるにも、死ぬにしても、もう何の心配もする必要がなくなりました。古い私はすでにキリストと共に十字架につけられているので、新しい人として生きてよい。ここに「新しく創造された人」、新人類があります。世の人からしたら、「大丈夫か?」と思われる「変人」でしょう。
しかし、そう信じて受け入れた者には、キリストの愛が迫って、駆り立てているのだと聖書は言うのです。自分中心・人間中心ではなく、エキセントリックになって、私たちを造り、生きる者としてくださった《神中心・キリスト中心》に生きる。《キリストが死んでくださったほどに、この私が神に愛され生かされている》。それを現して生きてよいのです。私たちは真に神の作品なのですから。
説教一覧(2021年度)
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恵みによって贖われ
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主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
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2021.6.27
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2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
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2021.10.24
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2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
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2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
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キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
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