霊によって一切を知る
説教要旨(3月27日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 2:10-16
牧師 藤盛勇紀
ある人は神を信じ、神を知って生きているが、ある人はどうしても信じられず、神など全く知らない。この違いは一体何か。これは1:18の言葉からつながっている問いです。「十字架の言葉は、滅んでいく者にとっては愚かなものですが、わたしたち救われるものには神の力です」。ある人にとっては「愚かなもの」が、ある人には「神の力」。そしてパウロはここで、「わたしたちには、神が“霊”によってそのことを明らかに示してくださいました」と言い、その“霊”が「一切のことを、神の深みさえ」究めると言います。単純に言えば、「神や救いのこと、信仰のことは、神の霊によってしか分からない」ということです。
「自然の人は神の霊に属する事柄を受け入れません」とあります。「自然の人」は「生まれながらの人」とも訳されますが、原文は「魂の人」。神の霊を拒否し、自然の体の機能である魂(精神)だけで生きている人。神の言葉を捨て、「命の木」から食べて命を得ること拒んだアダムとエバ以来の全ての人間です。土の塵だった人間に、神が命の霊を吹き込んでくださって、土塊は「生きる魂」とされました(創世記2:7)。なのに人は命の霊を捨てて、ただの肉と魂の塊になってしまった。それが「魂の人」です。
その人間が神を知り、神の命に与るようになるには(救われるには)、神の命の息吹である霊をもう一度吹き込まれ、神の霊に触れられること。それが神を知るただ一つの道です。「神を知る」とは知識のことではありません。命の霊を注がれることです。するとどうなるか。「わたしたちは、世の霊ではなく、神からの霊を受けました。それでわたしたちは、神から恵みとして与えられたものを知るようになったのです」とあるとおり、神から恵みとして与えられたものを知ります。恵みの命の交わりです。だから「十字架の言葉」が分かる。あのイエスの十字架は他でもないこの私のためだったと。言ってみれば単純なことなのです。しかし、どれほど人間の知識やこの世の知恵を集めてみたところで、生まれながらの人間は、神を知ることは決してできません。神を知ることは「恵み」だからです。「一切は」神から来ます。神の霊によるのです。
「人の内にある霊以外に、いったいだれが、人のことを知るでしょうか。同じように、神の霊以外に神のことを知る者はいません」。神の霊をいただいて、霊に導かれ、自ら霊に従って行くことは、自分に与えられた恵みを知ることですから、そこには必ず喜びがあり、感謝があり、言いようのない平安があって、自分が嬉しくなります。 まさに《分かる》のです。神の霊に触れられたら、私たち自身の魂が、そして体が、なぜか喜びます。神の霊は土の塵・肉体に触れて、生きた魂を起こされるからです。
「霊」のことと聞くと、何か高度な精神世界のことのように考えがちです。しかし、万物の主なる神は、ただの土塊の人間に命の霊を吹き入れられます。そしてこの霊が、「一切を」究め、知ってくださいます。こうして、神を知ることは自分を知ることになり、神は恵み深いという生きた事実を知るのです。それが私が知るべき一切のことだとさえ言えます。神の恵みを本当に知ったなら、私は全てを得ていると言えるからです。「霊の人は一切を判断しますが、その人自身はだれからも判断されたりしません」。もう人から裁かれることさえありません。私の命の主なる神以外、誰も私を決定づけることはできないのですから。
こうして恵みが分かり、「十字架の言葉」が私の内で命の言葉となっている。だからパウロは言います。「わたしたちはキリストの思いを抱いています」。
あなたの魂が主の霊に触れられたと感じたなら、そのあなたの魂を他に向けてはなりません。主の霊が生きて働かれるところで「主よ」と祈り、求めればよいのです。
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