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天の住まい

説教要旨(5月2日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 5:1-10
牧師 藤盛勇紀

 「地上の住みかである幕屋」と「天にある永遠の住みか」、地上で生きる私たちの体とそこに宿る精神や魂、そして死の後の体や場、死を超えた生。こう語るパウロは、地上で呻きながらも、一方で見えない天に目を注いで生きています。なぜそのように生きるべきなのでしょうか。それは、「見えるものは過ぎ去る」(4:18)からです。ここで「幕屋」とは神殿の原型ではなくテントのことです。聖書には「仮住まい」とか「寄留者」という言葉が繰り返し出てきます。もし、「自分はしっかりした家に住んでいるから安泰だ」と思っていたら、それは錯覚です。主イエスが語った「愚かな金持ちのたとえ」(ルカ12章)では、ある人が立派な倉を建て富も蓄え、自分で自分の魂に「さあ、安心せよ」と言いました。神はその人に言われます。「愚か者よ。今夜お前の命は取り上げられる」。
 テント生活というのは《いつでも次に移る》ことを考えている生活です。人生は旅、寄留者。しかし立派な家に住んでいるから忘れてしまうし、忘れたい。「今夜、お前の命は取り上げられる」かも知れないのに。この愚かさは、命の主との霊的な交わりを失った人の惨めさ愚かさです。地上の生ではいつか天幕を畳む時が来ます。だからいつも次の場に移ることを考えて生きるべきなのです。なのに世の人々は自分の人生が幕屋生活だなどと認めようとしない。次(天)を考えても無駄だからでしょうか。だから、惨めにもこの地上にいつまでも自分のいるべき場があると思って、地を這いつくばって生きています。
 主は弟子たちに言われました。「あなたがたは世に属していない」。主の弟子たち、キリストに結ばれた者は、世に属する者ではなく、天に属する者です。天に命と存在の根拠があり、天を故郷とする者です。
 今のコロナ禍がなければ、今日も聖餐に与るはずでした。聖餐は「主の晩餐」、あの主の過ぎ越し(出エジプト12章)を記念する食事でした。エジプトを脱出する時のあの食事は、腰に帯を締め、靴を履き、杖を持って急いで食べたのです。主のお言葉があったらすぐにでも移動できるようにです。
 パウロは、この地上の人生を、使命を与えられた者として、いつも懸命に自分の務めを果たしながらも、一方で、いつも次を見、天を見ながら生きています。天に自分のいるべき場所があり、自分の体も用意されている。その「天の住まい」を見ながら、「この地上の幕屋にあって苦しみもだえています」と言います。それは、早くこんな世に生活にはおさらばしたい、といった無責任な思いからではありません。
 パウロは、自分の思いは神に仕え神に喜ばれたいが、体には悪が付きまとい罪の法則のとりこになっていると告白しました(ローマ7章)。肉体を持って世を生きる者の現実です。ここでは、「体を住みかとしているかぎり、主から離れていることも知っています」と言います。パウロ自身その惨めさを無視せず、地上の現実を見ています。しかしそこに目を留めるのでなく、天から与えられる住みかを希望を持って見つめています。そうした生き方を、「目に見えるものによらず、信仰によって歩んでいるからです」と言っています。まさに、信仰とは見えない事実の確認です(ヘブライ11:1)。
 信仰生活は自転車で走るのに似ています。自転車は支えないと倒れてしまいますが、その主人に乗られると、自転車を倒す力と法則は、立って前進する力に変えられます。私たちは、主イエスによって、罪と死の法則から命をもたらす霊の法則へと移されました(ローマ8:1)。自分自身では起こりえない事態が、私たちと共に生きてくださる主によって起こされています。こうして、生きておられる主イエスの命が、倒れて終わるべき私たちの体に現され、死ぬべき私たちを、この地上でも生かすのです。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る