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聖なる国民

説教要旨(6月13日朝礼拝より)
サムエル記上 8:1-9
伝道師 杉山悠世

 年老いたサムエルは息子たちを士師の務めに任じました。しかし、サムエルの息子達による傍若無人な振る舞いは、礼拝を汚した祭司エリの息子たちを彷彿とさせるものでした。この出来事から士師が世襲によっては成り立たない働きである事が示されていると言えるでしょう。神によって立てられた者にしか成し得ない働きなのです。サムエルは神の御心を無視したわけではないでしょう。高齢のためにこれまで通りには担う事のできない務めの補佐役として任命したのです。けれども、息子たちは「賄賂を取って裁きを曲げていた」のです。このような事態に焦りと不安を感じた長老たちはサムエルの後継者問題に端を発し、王政の導入を求めて直訴してきました。
 士師は継続して存在するのではなく、必要に応じて主なる神がお立てになる職務です。ですから、いつも共にいてくれるわけではないのです。加えて、当時イスラエルはペリシテ人の脅威におびえていました。敵の攻撃に怯えて暮らすのではなく、頼れる軍事的リーダーを欲していたのです。王であれば、世襲制ですから後継者がいつ与えられるのだろうかという不安もありません。
 しかし、「彼らの言い分は、サムエルの目には悪と映」ったのです。人々は新しい士師ではなく、「ほかのすべての国々のように裁きを行う王」を求めたのです。「ほかの国々」とは、異邦人たちの国です。サムエルには、神に遣わされた士師を退けて王を立てるという事が、神の御心に逆らう事だと感じたのです。しかし、神の返答は意外にも「彼らの声に従うがよい。」と言うものでした。王を求める事が悪いのではなく、その動機が問題だったのです。これまで主なる神は、必要に応じてモーセやヨシュア、士師達を民のもとに送りました。しかし、いずれも主権は主なる神にあり、神によって選ばれた人々が御言葉を語り、人を裁き、導いてきました。主なる神が王として、裁き主としてイスラエルの上におられた事は他の国々とは大きく異なる統治の仕方です。他の国々では、人間によって定められたものが権力によって他者を支配します。けれども、神が治める国は人間の力や軍事力による支配ではありません。神の御心によって、愛によって支配される国です。強制的に人間を従わせるのではなく、私たちが自ら神の御心を訪ね求めるようにと備えて、導いてくださるのです。一方で、人間の王を求めるという事は、主権者である神を王座から引きずり下ろし、人間に王位を与えるという事です。これは主なる神に対する背信です。見えない神に信頼するより、見える王を求めました。人間の王を立てるという事は、ともすれば偶像崇拝に結びついてゆきます。主イエスが歩まれた時代にはローマ帝国が力をふるい、軍事力によって他国を制圧していました。ローマ皇帝は「神の子」という称号を掲げ、各地で皇帝崇拝が行われました。「神の子」とは、「神の跡継ぎ」という事です。イスラエルの民は人間の王を偶像として崇拝するような世界が訪れるとは想像していな方でしょう。民の願いを聞き入れられた主なる神は、サムエルを通して警告を発します。そして、この願いを聞き入れる事でイスラエルを見放されるのではなく、自ら王を定めになり、油を注がれた者として選び取られました。神は王の存在を否定はされませんでしたが、どのような王でも人間の罪による限界があります。神に選ばれた王でも永続的に正しい裁きを行い、主を畏れて正しく歩む事はできないのです。しかし、神は人間の不信仰によって誕生した王位に、ダビデをお立てになりました。その事によって新しい救いの歴史をはじめられたのです。この後、預言者たちはイスラエルの歴史上、最も偉大な王ダビデの子孫から救い主が誕生する事を告げました。それがイエス・キリストです。この方は人間を罪の奴隷から解放されるためにお生まれになった、真の神の子です。私達はこの方に結ばれて、互いに愛の支配の奉仕者として仕えるのです。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る