共に死に、共に生きる
説教要旨(7月4日朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 7:2-4
牧師 藤盛勇紀
「心を開いてください」とパウロは語りかけます。同様の言葉は6:13にもありました。より親しい交わりを持ちたいということなのでしょうか。教会は互いによく知り合って親しい交わりを作るところだと考える人や、使徒信条の「聖徒の交わり」を考える人もいると思います。
しかし、「聖徒の交わり」とは信徒が互いに親しくすることではありません。「聖徒」とは「聖なるもの」という言葉で、キリスト者のことでもありますが、聖なるものに与っていることでもあります。いずれにしてもキリスト抜きにはあり得ない交わりなのです。互いにキリストの恵みに与っていることを信じる独特の交わりです。だから、「聖徒の交わり」を「信ず」と言うのです。
パウロは手紙の読者に「聖なる者たち」と呼びかけていますが、聖徒の交わりを信じてのことです。パウロは伝道者として、こう勧めていました。神はキリストによって私たちを御自分と和解させてくださった、その代償として御子イエスの血が注がれた、その和解のための任務を自分たちに与えてくださったのだと。だから「キリストに代わってお願いします。神と和解させていただきなさい」(5:20)と訴えるのです。これは、キリストの恵みをまだ受け入れていない人にだけでなく信徒にも語っています。なぜなら、キリストによって神と和解させていただいていることこそが「聖徒の交わり」の根拠であり土台だからです。
昔多くの教会で読まれた『教会生活の処方箋』(辻宣道著)でこう言われています。《「交わりがほしい」という声が上がったら「黄」信号》《「交わりがない」とはいったい何か。何を指してそれをいうのか。問題はそこです》《教会の交わりはすばらしいと思います。相手の中に無遠慮に踏み込んで行かずとも…その魂のためにとりなすことができるからです。…いちいち確かめ、手を取り合わんばかりになれ親しむ。…ないものねだりをしていないでしょうか。…お互いキリストの恵みの中で生きていることが信じられるならそれで十分です》。そしてこの後で、使徒信条の「聖徒の交わりを信ず」について語られています。
交わりを求めること自体は悪いことではありません。ただ、キリストの恵みに生きていることを信じられなくなると、《その代わりに》情緒的な交わりや体感的な交わりを求めるようになるでしょう。
パウロが求める交わりは、キリストの恵みに生きていることを信じる聖徒の交わりです。しかしそのパウロは信徒たちから厳しい批判や誤解に晒されていました。それでもこう言うのです。「わたしはあなたがたに厚い信頼を寄せており、あなたがたについて大いに誇っています」。そして「あなたがたはわたしたちの心の中にいて、わたしたちと生死を共にしているのです」と。
どう見ても問題のある教会を「誇る」と言ったのは、パウロ自身がキリストの使者として彼らに和解の福音を伝え、コリントの人々はそれを信じて受け入れたからです。人間愛や人間の善意や知恵に基づいた交わりではないことを知っているからです。コリント教会の人々は、人間的にはとても誇れるような集団ではなかった。だからこそ、キリストによってしか立ち得ないことも知ったのです。パウロが誇ったのはそこです。それが慰めでもありました。だから「生死を共にしている」とは真実なのです。この言葉は「共に死に、共に生きる」という言葉です。私たちはキリストと共に十字架につけられ、罪に死んで、生けるキリストの命に結ばれているからです。
教会は「キリストの体」です。単なるたとえではありません。私たちはキリストの血によって贖い取られ、主の命の息吹が吹き込まれている。キリストの血が通っているのです。自分がそのような者とされていることに、どうか心を開いてください。
説教一覧(2021年度)
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