今週の説教
豊かな者はさらに豊かに
説教要旨(8月1日朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 8:1-7
牧師 藤盛勇紀
パウロは改めて「神の恵み」を知らせましょうと言い、具体的な話をします。「神の恵み」と言えば、良いものを「いただいた」ことだと思われます。ところが、ここで語られるのは、マケドニアの諸教会が献金運動に参加した話です。つまり、《いただいた》話ではなく《与えている》話なのです。
エルサレムで生まれた教会はユダヤ人たちの集まりでした。しかし、彼らが十字架につけたイエスを神の子・キリストだと信じるわけですから、当然ユダヤ社会で激しく迫害され、エルサレムに踏みとどまった主立った人々は孤立無援。パウロたちは、彼らを援助する献金を呼びかけたのです。また、最初の教会はユダヤ人の教会ですから、異邦人に対する偏見が根強くありました。パウロらの異邦人伝道によって多くの異邦人教会が生まれましたが、異邦人に福音を伝えること自体、反対する人たちも多く、初代キリスト教会はユダヤ人と異邦人とに分裂する危機にもありました。
パウロは、神の恵みのもとに教会が一つとされていることを知るためにも、異邦人教会が、ユダヤ人中心のエルサレム教会を援助することを呼びかけたのです。マケドニアの諸教会は積極的に参加しましたが、《持っている者が持たない者を助ける》ということではありません。マケドニアの諸教会は迫害の中にあり、経済的にも「極度の貧しさ」にあったのです。ところが彼らは、自分たちの力を超える援助を、自ら強く願い出て行ったというのです。
金銭による援助は、与える側・受ける側双方同じ思いにならなければ、微妙な心理が働き、ややこしい問題が生じたり、互いに傷つく結果となることもあります。しかし、教会には双方を一つにするものがあります。それは《神の恵み》です。生きて働かれる神の恵みこそが、与える人の傲慢を砕き、受ける側の卑屈さを克服させます。マケドニアの人々はこの「神の恵み」がよく分かっていました。憐れみに満ちた神が、いついかなる時にも自分たちを生かし万事を益としてくださる、その事実をキリストにあって味わい知って生きていたのです。だから極度の貧しさの中でも感謝が失われることがなく、まさに恵まれていたのです。
ところが、コリント教会の人々にはそれが分からなくなっていました。彼らは様々な賜物という面では恵まれていました。実は10節にあるように、この献金運動に先駆けて参加したのはコリント教会でした。ところが挫折してしまったようです。神の恵みを上辺だけで理解していたからでしょう。
一方マケドニアの諸教会は、極度の貧しさの中にありながら、「慈善の業と奉仕に参加させてほしいと、しきりに」願い出た。しかも「彼らはますます主に、次いで、神の御心にそってわたしたちにも自分自身を献げた」といいます。彼らは《自分自身を主に献げた》のです。それが具体的には献金運動への参加に現されたのです。
4節の「慈善の業」との訳は少々原文の意味から離れています。口語訳も新しい協会共同も「恵み」です。慈善の業に参加したいというより、「恵みに与りたい」です。奉仕することがなぜ「恵み」なのか。私たちが為す「恵みの業」も、主なる神が、自分を献げる私たちを用いてご自身の恵みの業を現してくださるからです。私たちは貧しいのに、豊かに用いられ、豊かに生かされる、だから感謝なのです。
神が、私たちを用いてくださいます。 もし自分の持ち物や能力でなんとかしようとしたら、「不足」を思い知るだけでしょう。その前に、「何も持っていない私なんか」と、よくある偽りの謙遜を持ち出すこともあるでしょう。しかし、与えてくださるのは神、用いて下さるも神、良き働きをしてくださるのも神ご自身です。私たちの主なる神は、「極度の貧しさ」からでさえ、溢れ出るように豊かにしてくださいます。
説教一覧(2021年度)
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2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
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2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
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2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
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2021.7.18
救いに至る悲しみ
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2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
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主の栄光の現れ
2021.8.29
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2021.10.10
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2021.10.17
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2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
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2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
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2021.12.19
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あなたの中のキリスト
2022.1.2
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霊によって一切を知る