狭い門から入れ
説教要旨(7月7日 朝礼拝)
マタイによる福音書 7:13-14
牧師 藤盛勇紀
イエスが言われる「狭き門」は、一般的なイメージとは全く違います。主は「狭い門から入れ」と命じ、続いてこう言われます。「滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない」。主の命令は、命か滅びかの分かれ道に、私たちを立たせます。
滅びに通じる門とその道は「広々として、そこから入る者が多い」。非常に多いという言葉です。多くの賢い人も真面目で誠実な人もいる。神の前に善行を積む人もいる。それは皆、「広い門」なのです。それは結局、自分でなんとかしようとする道です。その門には、善人も悪人もどんな人も入って行きます。それこそ「狭き門」を突破した実力と自信を持って、自ら道を切り開く人もいます。どんな人をも招き入れる、広々とした道です。
しかし、「狭い門」は「命に通じる門」であり「道」です。宗教者や聖書を研究している人が入れるわけではありません(ヨハネ5:39-40)。主は、あなたは自分で何かを為して命を得よとは教えてはおられません。「私のところに来い」と言われるのです。イエスは「私が門である」「私を通って入る者が救われる」と言われました(ヨハネ10:9)。そして、「私が道であり、真理であり、命である」と。
命に至る門は「イエス」なのです。主は、「私を通れ。私に入ってしまえ。そして私を歩め、私を生きよ!」と命じておられます。「この道は細い道だから、頑張ってなんとか歩き通せ」とは言われません。確かに門は狭い。この狭さが私たちを削ります。何かを引っさげ、多くを抱え込んで入るのは無理です。だから手放す。自分をも手放す。主が「私に来い」と言われるから、それだけを頼りに、入る。これは。自分の決断とは違います。
「主が言われる『狭き門』とは、決断だ。決断の連続だ」という人もいますが、そういうことなのでしょうか。狭い門に入るのは、自分が放り出されるような、自分でも投げ出すような経験でしょう。もうため息しか出ず、ただ「主よ」と呼ぶだけ。しかしそれは、神の力を経験していく道の始まりです。
「狭い」という言葉は「呻き」「ため息」という言葉と繋がっています。「私たちはどう祈るべきかを知りませんが、“霊”自らが、言葉に表せないうめきをもって執り成してくださる」(ローマ8:26)。祈る言葉さえ出ない、ため息しか出ない。そこでこそ、イエスとその霊に触れられるのです。主は言われました。「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる。わたしの軛は負いやすく、わたしの荷は軽いからである」(マタイ11:28-30)。私のもとに来い。そして荷を降ろせと。私のところに来て、自分でその道を行け、ではなく、「私の軛を負え」「そして私を知れ」と言うのです。「私と共に歩け。 私があなたと共に行くのだから」。
「狭い門」に入るとは、「私に来い」と言われるイエスと出会うことです。この方の言葉を聞くこと、この方に触れられことです。「入れ」という命令形は、「入ってしまえ」ということです。私の固い決断などではなく、私たちが「自分を主に投げてしまう」ことを促す言葉です。「いいから、私に来い!」と。この方に自分を手放し、重荷をこの方の前に降ろしてしまう。そこから、この方の真実を味わい知っていくのです。
イエスは「私は門である」と言い、「私を通って入る者は救われる。その人は門を出入りして牧草を見つける」(ヨハネ10:9)と言われました。一度イエスに入ったならば、そこでただ囲われるのでなく、今度は自分で出入りして、命の糧を見つけて味わうのです。
主が「私が門だ。私に入ってしまえ」と命じておられます。信頼してよいのです。この方は、神を知らずに生きていた私たちのために、十字架についてくださったお方。私たちをその十字架に共につけて、「古いあなたは、もうオシマイになった。私の命を受けよ」と、命の霊を吹き込んでくださったのです。自分を握りしめて滅びに向かうのでなく、イエスに結ばれて、この方の命をいただいて、天の祝福をこの地で味わわせていただきましょう。
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