だから、恐れるな
説教要旨(12月15日 朝礼拝)
マタイによる福音書 10:26-33
牧師 藤盛勇紀
イエス様は繰り返し「恐れるな」と言い、体を殺すことができるだけの人間など恐れるな、ただ神のみを恐れよと言われます。あなたの神は「魂も体も地獄で滅ぼすことができる」と。脅そうとしているのではありません。「二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか」。一羽では値も付かない雀に、誰も価値を置きません。しかし「その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない」。まして、あなたがたにはなおさらではないか。神はあなたがた一人一人をどれほど目に掛け、心に掛けておられるか。あなたの命はあなたのものでも他人のものでもない、あなたの父の御手にあるのだと。
誰もが恐れる死は、決して避けることはできません。だから恐れるのは無意味です。「死」そのものは、私たちの課題でも問題でもありません。それは「生まれ」もです。私たちの「生まれ」は、私たち自身の問題ではありません。誰でも気づいたら人として生きていたのです。この命、この生は、私たち自身の願いや思いとは全く無関係です。それは、信仰と恵みによって「新しく生まれること」も同じです。だから「恵み」なのです。ただ受けるだけ、いただくだけです。
私たちの課題は、その命をどう生きているかです。パウロは「生きるにしても、死ぬにしても」と言いました。私にとって「生きるとはキリスト」「死ぬことは益」だと(フィリピ1:12)。いただいている命は誰のものか。自分のではありません。そこを勘違いしていると、「死」そのものが大問題になってしまいます。イエス様は言われました。自分の命を救いたいと思う者はそれを失う。しかし、私のために命を失う者は、それを救うのだと。
神だけが「魂(=命)も体も地獄で滅ぼすことができる」とは、命はあなたのものでも他人のものでもない、あなたに命を与えられたあなたの父のものだということです。
だから人間は体を殺すことができても、「命」を殺すことはできなし、生かすこともできません。あなたの命は主からの命です。だったら、あなたはどう生きるのか。そう問われているのではないでしょうか。
その問いに応えて生きるとすれば、それは、あなたがあなたの主を知っているときです。でなければ、命の意味も死の意味も分からず、ただ生きて死ぬだけです。
何かを恐れるとき、私たちは恐れている対象に支配されています。考えなくても、意識しなくても、ガッチリ捕らえられています。奴隷なのです。その時あなたは、生きておられるあなたの主を忘れています。
イエス様は、あなたが恐れるべき神は「あなたの父」だと言われます。だからあなたが祈る時は、「奥まった自分の部屋に入って戸を閉め、隠れたところにおられるあなたの父に祈りなさい」と言われます(6章)。人の目や人の思いなど関係ない。あなたはあなたの神との交わりに入り、あなたの父が惜しみなくくださるものによって生きるのだと。
「神を恐れる」とはそういうことです。神の目を気にして、神の裁きがあるのではないか、罪に対する罰があるのではないかと、怯えて生きることではありません。主を信じ、主と一つとされている者は、「罪に定められることはありません」(ローマ8:1)。
「神を恐れる」とは、あなたの父にすっかり信頼して、解放されていることです。本当に神を恐れる人は、人となって世に来られた御子イエスと一つとされた人です。私のために敢えて世に来て、罪を負って死なれ、復活されたイエスと一つとされている者だけです。
イエスと結ばれずに「神を恐れる」とすれば、それは神に怯えるだけです。神が恐ろしいから善いことをしようとか、裁きが下されないように正しく生きようと、汲々と生きるのがせいぜいでしょう。それは「罪と死の法則」に囚われた奴隷の生き方です。
パウロは言いました。「生きているのは、もはやわたしではありません。キリストがわたしの内に生きておられる」(ガラテヤ2:20)。それは、自分を失っているのではありません。イエス様が言われたように、自分を捨てて「命を失う者は、それを救う」のです。キリストと一つとされた新しい命、新しい私は、人にも自分にも囚われない自由に生きます。「だから、恐れるな」と主は言われます。
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