新しいぶどう酒は、新しい革袋に
説教要旨(10月20日 朝礼拝)
マタイによる福音書 9:14-17
牧師 藤盛勇紀
「そのころ、ヨハネの弟子たちがイエスのところに来て、『わたしたちとファリサイ派の人々はよく断食しているのに、なぜ、あなたの弟子たちは断食しないのですか』と言った」。洗礼者ヨハネは、世に来られる救い主メシアの先触れとして、人々に悔い改めを勧めました。イエス様が来られた時、「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ」と言い、「この方こそ神の子である」と証し、ヨハネの弟子たちの多くはイエス様に従ったのですが、まだヨハネのもとに留まっている者たちもいました。彼らがやって来て、イエス様を批判するのです。「そのころ」彼らは何を見たのか。直前に記されています。イエスは事もあろうか罪人の代表のような徴税人を弟子にし、しかも他の大勢の罪人を交えて宴会をしていたのです。何ということか。ファリサイ派の人々がイエスの弟子たちを詰問しました。「なぜ、徴税人や罪人と一緒に食事をするのか!」。
「その時」です。やはり律法をキッチリ守るヨハネの弟子たちが来て問います。自分たちもファリサイ派の人々もよく断食しているのに! 彼らの苛立ちが伝わって来ます。「ヨハネ先生は、あなたが『来るべきお方だ』と言われるが、自分たちが見る限り到底そうは見えない。汚らわしい罪人たちと交わっている。全くだらしない、汚れた生活ではないか」。イエスと弟子たちのしていることは、あってはならないこと。「破天荒」だとか「型破り」では済まない。
そこでイエス様は語られました。「新しいぶどう酒」は発酵し、泡立ちます。命があり生きている。新しい命は、柔軟で瑞々しさを保った「新しい革袋」に入れなければなりません。しかし「古い革」は固く柔軟性がなく、瑞々しさなどありません。古い革袋は、生きた命に相応しくないのです。
「新しいぶどう酒」とはイエスご自身です。「革袋」はこのお方を迎え入れるべき私たち人間。この新しいぶどう酒の「新しさ」が分かるかどうか、この方を「新しい方」として受け入れるかどうかによって、人間は「新しい人」と「古い人」に分けられ分断されます。
弟子たちもまだ分かっていません。イエスが言われる「新しさ」を知るのは、ずっと後になってから。イエス様が十字架で死んで、復活され、神のもとに帰られたその後、約束された聖霊が弟子たち降ってから、ようやくその「新しさ」を知ったのです。
どんな「新しさ」か? 聖霊降臨の日、ペトロら十二人は立ち上がり、それを語り始めたのです。聖書全体が預言し、約束されていたその時がついに来たのだと。あなたがたが十字架につけて殺してしまったイエスを、神は復活されられた。あのイエスが、聖書が証ししていた主、メシアなのだと。
ここでヨハネの弟子たちやファリサイ派はイエス様を非難していますが、彼らは何も分かっていません。メシアがどのような方として来られるか、どんな仕方で人間の罪を赦し、傷を癒やし、平和をもたらされるか。全く想像もできない。だから、驚くべき救い主の姿を語ったイザヤは言ったのです。「わたしたちの聞いたことを、誰が信じえようか」と。
預言者エレミヤは言いました。「見よ、わたしがイスラエルの家、ユダの家と新しい契約を結ぶ日が来る、と主は言われる」。「来るべき日…、わたしの律法を彼らの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す。…人々は隣人どうし、兄弟どうし、『主を知れ』と言って教えることはない。彼らはすべて、小さい者も大きい者もわたしを知るからである」。
これは、私たちを新しく生かす命の霊となられたイエスの霊、聖霊によります。この霊を神は全ての人に注ぐと言われました。それをあの日、ペトロは最初に語ったのです。
神の霊によらなければ、イエスが言われた「新しさ」は分かりません。だからパウロも、人の知恵は何の役にも立たない、一切は霊によって明らかにされると語ったのです。ファリサイ派やヨハネの弟子たちのように、どれほど聖書に通じていても、それをどれほど熱心、誠実に行っても、「新しさ」は全く理解できないのです。イエス様が言われた通りです。「人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない。…だれでも水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない」(ヨハネ3:3~7)。
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