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十字架が分岐点

説教要旨(12月29日 朝礼拝)
マタイによる福音書 10:34-39
牧師 藤盛勇紀

 「私が来たのは、地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない」。この言葉に心がざわつかない人はいないでしょう。先週クリスマスを祝ったばかりです。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」と天使は賛美し。メシア誕生を預言したイザヤは「その名は、『驚くべき指導者、力ある神/永遠の父、平和の君』と唱えられる」と言いました。なのに、世に来られた方は、平和ではなく剣をもたすために来たと言われる。誰でも戸惑います。
 イエス様は「私よりも…を愛する者は」と言われます。愛することにおける順序です。1番、2番、3番という順序ではなく、単純に「イエスが一番」を要求しているのです。言い換えれば、イエス様はこう問うておられます。「この人たち以上にわたしを愛しているか」。復活のイエス様がペトロに問うた問いです。ペトロは十字架の死に向かうイエス様に従えませんでした。イエスを愛していると自負していたのに、イエス様を裏切り、見捨てました。他の弟子たちも皆そうです。「自分の十字架を担ってわたしに従わない者は、わたしにふさわしくない」。この言葉がカギです。
 「自分の十字架」と聞くと、たいていの人は自分に負わされた重荷のことだと思います。自分に強いられたこの問題、この役目を負っていくことだと、自分で自分の十字架を決めています。しかしそれを「十字架」と言うのでしょうか。重荷なら誰でも否応なく負っています。しかし、聖書が「十字架」と言えば、私たちの罪の贖いのための、ただ一度の御子の死の十字架でしかありません。あの十字架と私たちは、どんな関係にあるでしょうか。
 聖書が繰り返し言うように、私たちがキリストに結ばれているなら、私たちはすでにキリストと共に十字架につけられたのです。そしてキリストと共に復活したのです。体の復活は将来ですが、私たちを生かす霊において、私たちはすでに復活しています。それをパウロは、「キリストと結ばれる人は誰でも、新しく創造された者なのです。古いものは過ぎ去り、見よ、新しいものが生じた」とも言います。これを、神がなさったのです。
 全ての人間は罪と死の法則に捕らえられています。アダム以来、人は神から離れ、霊の死んだ者、生きて死ぬ者です。「罪の報酬は死」、これはまさに法則です。古い私はどうにもならず、死ぬしかないのです。だから私たちも、あのイエスの十字架にはりつけにされたのです。そしてイエスにあって共に復活したのです。なぜそんなことがあり得るのでしょうか。どうしてそんなことが分かるのか。まさにそれが「信仰」です。信仰は、まずは神の「真実」です。私たちはそれに触れられて信じたのです。「信仰は霊」です。時間、空間を超えた神の真実に触れさせます。神の真実、私たちの信仰が、私たちを十字架で死に復活されたイエスと結ばせるのです。
 「十字架を担ってわたしに従わない者は」というイエス様のお言葉は16章でも出てきます。フィリポ・カイサリア地方へ行く道で、イエス様が弟子たちに「あなたがたは私を何者だと言うのか」と問われ、ペトロが「あなたはメシア、生ける神の子です」と人類初のキリスト告白がなされた場面です。その時からイエス様は、ご自分が必ずエルサレムに行き、人々から多くの苦しみを受けて殺されて、三日目に復活するという事実を、弟子たちに「打ち明け始められた」のでした。
 ところが弟子たちは、イエス様が言われることが全く理解できず、ペトロはそれを全否定しました。イエス様は厳しくペトロを「サタン」と呼びましたが、そこでイエス様は言われたのです。「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。・・・」。
 イエス様は「私に従って来なさい」と言われます。死んで復活する「私」イエスです。だから「私を信じなさい」と言われるのです。ここが、命を得るか失うかの分岐点です。私たちが、主によって新しく生まれた自分を選び得るのは、ただ十字架のもとのみです。だからパウロも言ったのです。「私は十字架につけられたキリスト以外、何も知るまいと心に決めた」。復活していま私を生きておられるキリストは、あの十字架につけられたキリストだからです。
 

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