最後の預言者
説教要旨(1月19日 朝礼拝)
マタイによる福音書 11:1-19
牧師 藤盛勇紀

領主ヘロデに対しても容赦なくその罪を指摘したことで、ヨハネは投獄されています。彼は獄中でイエス様の働きについて聞き、弟子たちを派遣して尋ねます。「来るべき方は、あなたでしょうか。それとも、ほかの方を待たなければなりませんか」。
もちろん、イエス様がメシアだと信じています。しかし、聞こえてくるイエス様の様子は、自分が語ったメシアの姿と何か違うのです。ヨハネは、厳しい裁きをもたらすメシア像を語りました(3:7-12)。ところがイエス様は裁くというより、病を癒やし、罪人と親しく交わり、慰めを与えられる。ヨハネが捕らえられても、ヘロデを正面から批判したり、ヨハネを救出しようとする様子はありません。
イエス様はこう答えます。「目の見えない人は見え、足の不自由な人は歩き、重い皮膚病を患っている人は清くなり、耳の聞こえない人は聞こえ、死者は生き返り、貧しい人は福音を告げ知らされている。わたしにつまずかない人は幸いである」。神の国は確かに始まり、人々は解放されつつあり、その福音が告げられている。なのに、ヨハネ自身は解放されることなく、やがてあっけなく殺されてしまいます。イエス様は、世の人々と共に歩み、世の罪を一身に負って、十字架の死に向かって歩まれます。そして人々から憎まれ、捕らえられ、嘲りの中で殺されます。
しかし、こんな出来事の中に、確かに神の救いが来ている! 人々の真の解放が始まっている! だから「私につまずかない者は、幸いだ」と言われるのです。「つまずく」とは、自分が期待したものと違うものに腹を立てて蹴飛ばすことです。救いとはこういうことだと、自分の願望を中心にして、それに合わない神の働きを認めないことです。しかし、そうでない者は幸いだ、と言われます。
ヨハネについてイエス様は言われます。「預言者か。そうだ。言っておく、預言者以上の者である。…およそ女から生まれた者のうち、洗礼者ヨハネより偉大な者は現れなかった」。
イスラエルの長い歴史の中で、多くの預言者が神から遣わされました。そして、終わりの時に神はメシアを世に遣わして御国をもたらし、救いを成就される。そういうヴィジョンを示しました。そして、ついにヨハネが、「この方がそうだ」と直接メシアを指し示した。だからヨハネは最後の預言者、旧約時代を締めくくる最大の預言者なのです。
しかし、「天の国で最も小さな者でも、彼よりは偉大である」と主は言われます。神の国に入れられた者は、どんなに小さい者でも、ヨハネよりも偉大だと。この驚くべき言葉は、キリストと結ばれて神の命に与った私たちのことです。私たちは旧約時代の預言者たちや信仰者たちよりも偉大なのでしょうか? そうです。私たちはヨハネまでの旧約時代のどの信仰者よりもはるかに偉大なものとされています(⇒ヘブライ11:39-40)。
旧約の信仰者たちは、約束されたものを手に入れなかった。しかし、それをはるかに望み見て喜びの声を上げ、この地上では旅人、仮住まいの者だと言い表しながら、天の故郷を熱望していました。しかし今、キリストと一つとされた私たちは、天に属する者とされました。肉体をもって地上を歩みながらも、すでに天の国の住人なのです。
イエス様はこの時の状況について、「天の国は力ずくで襲われており、激しく襲う者がそれを奪い取ろうとしている」と言われました。不思議な言葉です。いつくかの見方がありますが、一言で言えば、天の国は来ているということです。天の国はこの地上に触れ、神の恵みとその支配が世と出会い始めており、衝突している。イエスにおいて天と地は触れ合ったのです。それは、激しい衝突でもあります。地上を歩まれるイエスにおいて、激しく神の国が到来している、いや、神ご自身が来ておられるのです。
神の救いのご計画とその恵みの御業は、世に具体的に現れて、この世はそれに対して良くも悪くも激しく反応しています。救いそのものの到来であるイエスに対する世の答えは、どうだったか? 天から来られたこの方を殺すという反応でした。これは大いなる皮肉ですが、こうして倒錯した世の罪が暴かれました。しかし、この悲惨な出来後の中に、神の福音が、世の罪の赦しの恵みが来たのです。
説教一覧(2024年度)
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