主を知って生きる
説教要旨(4月19日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 10:5-13
牧師 藤盛勇紀
キリスト者が信じていることを一言で言うならば、「イエスは主なり」(1コリント12:3)に尽きるでしょう。2千年前、十字架にかけられ処刑されたあの方、イエスが「主」であるという信仰です。「主」とは何かを一言で言うのも難しいことですが、万物と私たちの存在の根拠、命の主にして今なお全てを支配しておられる方、まさに「主」です。主なる神は言葉によって万物を創造されました。意志と意図をもって万物を存在させ、私たち一人一人を造り、出会い向き合ってくださる人格的な存在です。「イエスは主なり」との信仰は、この方と出会い、この方と共に生きていることです。今この方を「主よ!」と呼んでいるのです。
人々から見捨てられ裏切られ、嘲られ唾を吐きかけられ、神からも見捨てられた者として十字架につけられたイエス。そんな人を「わが主、わが神よ」と信じるとは、およそあり得ないことです。「イエスは主であると公に言い表し…」。「公に言い表す」は口語訳では「告白」です。ただ、「告白」と言うと、秘められた思いを打ち明けるような私的な事柄のイメージがあります。「私は、こう考えこう信じます」と。しかし信仰告白は私的なことではありません。「告白する」とは、「一つのこと(同じこと)を言う」という意味の言葉です。「他の人は違うかも知れないけれども、《私は》こう信じます」というのではなく、「私《も》そう信じます」と同意し、公に言い表すことです。
キリスト者は「イエスは主なり」と信じ、そう信じて生きているので、信仰は表現されることになります。信仰者は生ける主を表す《表現者》です。
神の固有名詞「ヤハウェ」も「主」と訳されていますが、一般名詞の「主」は「位置」や「関係」をも表します。イエス様が私の主であるなら、私は主に対しては従・僕です。順序や秩序があり位置関係があります。「すべての人に同じ主がおられ」とありますが、イエス様が「主」であられるなら、全ての人にとって主であり、創造主として万物の主です。だから《全てのものは主のもとに位置を与えられ》《主のもとでそれぞれ意味を持つ》ことになります。オーダー(順序)に位置が与えられるのです。野球の打順やバレーボールのポジションなどが「オーダー」と言われます。教会でも牧師や伝道師等の教職に任じることを「オーディネーション」と言います。教会が公的に職務に位置づけるのです。教職だけでなく、全てのキリスト者は洗礼によってキリストの体なる教会の肢にとされ、キリストのもとで位置や意味を持っているのです。
私たちがここに存在すること、世界がこのようにあること、ある出来事が今あるようにあり、私たちはその中で位置を持ち、積極的に言えばそれぞれの場で使命を持っています。それは「主を知って生きている」からです。私たちの主は、ただ君臨する主ではなく、愛と喜びをもって私たちを造り、私たちを宝とし、ご自分の瞳のように守ってくださる方、愛の源なる神です。私たちの罪ゆえの裁きと死をご自身で引き受けてしまい、私たちが作った隔たりをご自身で埋めてしまわれたお方です。だから「神は愛なり」と告白するのです。
「『主を信じる者は、だれも失望することがない』」、そして「ユダヤ人とギリシア人の区別はなく、すべての人に同じ主がおられ、御自分を呼び求めるすべての人を豊かにお恵みになるからです。『主の名を呼び求める者はだれでも救われる』のです!」とあります。これは本当です。イエスをキリスト・主と告白し、主を呼ぶのです。私たちは、この方の体とされ、一人ひとりその枝とされています。この大きな愛のオーダーの中に位置づけられているなら、誰でも、どんな人でも、失望することがない!私たちの主は、そのようにして「すべての人を、豊かにお恵みになる」のです。
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