平和の源である神
説教要旨(11月22日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 16章17-24節
牧師 藤盛勇紀
「平和の源である神は間もなく、サタンをあなたがたの足の下で打ち砕かれる」。この言葉は不思議です。神がサタンを《御自身の足下で》打ち砕くのでなく、「あなたがたの足の下で」と言うのです。万物の真の支配者であられる主が再び世に来られ、全てを明らかにし、全てに決着を付けてくださる終わりの時を、私たちは信じています。それは、「ウルトラマン」の登場を待つのとは違います。私たちは戦わなくてよいわけではなく、神の勝利を「私たちの足の下で」経験するのです。
パウロはここで挨拶を記しながら、常に教会に起こる日々の戦いが頭に浮かんだので、勧めの言葉を記したのでしょう。「こういう人々を警戒しなさい。彼らから遠ざかりなさい」と。ヨハネも手紙で言います、「この教えを携えいずれずにあなたがたのところに来る者は、家に入れてはなりません。挨拶してもなりません」。警戒し挨拶もするなとは、キリスト者同士の中で、ある人々とは付き合うなということです。
教会はこの世の悪や汚れとは無関係な清らかな世界ではありません。この世のあらゆる問題は教会にも常に入って来ます。キリスト者でありながら、人を神から引き離そうとする者も出ます。「こういう人々は、わたしたちの主キリストに仕えないで、自分の腹に仕えている。そして、うまい言葉やへつらいの言葉によって純朴な人々の心を欺いているのです」。まさに悪魔的で詐欺師のようです。悪魔は狡猾ですから、羊のように優しく清く正しい顔をして近づいて来ます。だから「純朴な人々」が騙されてしまうのです。
教会にはいろいろな人がいます。性格も気質も人それぞれで、様々な欠けや欠点もあります。ただ、基本的には「純朴」で「従順」なところがあります。そうでなければ、神の御前にひざまずき、主に服従することなどできません。
ただ、未完成の中間時を生きる私たちにとって、「純朴さ」は弱点でもあります。異なる信仰や思想的な悪意が教会に入り込むのを入り口で防ぐことはまず困難です。だから、「知らないうちに捕まってしまった」などということがないように、自ら警戒することが必要なのです。そしてキリストの教えや福音からそらせようとする者がいれば、《近づかない、挨拶さえしない》。そうした知恵が必要です。単純な《純朴一本槍》ではダメなのです。「熱いか、冷たいかであれ」と主は言われました。パウロは「善にさとく、悪には疎く」と言い、イエス様は、「蛇のように賢く、鳩のように素直に」と言われました。それは、「狼の群れに羊を送り込むようなもの」だからだと。
この世が羊や善人だけなら、賢く警戒する必要はなく、信頼と純朴さだけで行けます。しかし現実は「狼の群れ」です。しかしイエス様は言われました。「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」。私たちは罪と死の餌食となって滅ぶのでなく、命を得る。その勝利を、すでに主が勝ち取られました。この「主の勝利」に「私たちの足の下」で与るのです。サタンを打ち砕くのは神の足です。それが「私たちの足の下で」なされるのは、私たちはこの世に遣わされて、主のものとして神の直下、キリストの十字架の直下に生きるからです。
戦いは避けられませんが、それは勝利に与るためです。この世には現実として悪魔的な力が働いているのですから、勝利に与らなければ、神から引き離されて敗北し、滅びるだけです。しかし、私たちは、「平和の源である神」の勝利に与ります。私たちの戦いは、勝つか負けるか分からないギリギリの戦いではなく、すでに勝っている戦いです。悪戦苦闘があるけれども、《すでに勝っている》。私たちは自らの足下で、この恵みの事実を経験していくのです。
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