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主にある挨拶

説教要旨(11月15日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 16章3-16節
牧師 藤盛勇紀

 ローマの信徒たちに宛てたパウロの挨拶の言葉です。「あなたがたも、聖なる口づけによって互いに挨拶をかわしなさい」と言いますが、「口づけ」という形は問題ではなく、大事なのは「聖なる」挨拶を交わすということです。「聖」とは、道徳的な清さや衛生的な清ではなく、主のものとして「区別され、分かたれている」ことです。
 ここに出てくる人々の中で、プリスカ(プリスキラ)とアキラの夫婦は有名です。コリントでパウロと出会った彼らはパウロを助け、命さえかけてくれたというのです。他の人々もパウロと深い関係があったはずですが、ただ個人的に親しかったから挨拶を送っているわけではありません。ここに名前が挙げられている人々はどういう人々でしょうか。それは、「キリスト・イエスに結ばれ」た協力者、「あなたがた(教会)のために非常に苦労した」者、「主に結ばれている愛する」者、「主のために苦労して働いている」者、「主のために非常に苦労した」者、「主に結ばれている選ばれた」者、そして、「聖なる者たち一同」、つまりキリストに結ばれている全ての者です。
 この挨拶は、主のために労苦している者、キリストに結ばれて生きている者へ送る、キリスト者の、キリスト者への挨拶です。そこは「命の重み」があります。キリストの十字架の恵みの重さを知っているのです。そのことを思うと、この長い挨拶の中でただ一人「選ばれた者」と言われるルフォスが注目されます。「主に結ばれている選ばれた者ルフォス、およびその母によろしく」。ルフォスは福音書の中にも出てきますが、実はこのルフォスの父が有名だったのです。イエス様の十字架の道行きに深く関わった人です。処刑されるためにイエス様は十字架を担いで歩かされました。鞭打たれた体はすでにぼろぼろで、担いで歩くことができなくなります。その時、見物していた群衆の一人が代わりに十字架を担がされます。それがルフォスの父でした。マルコ福音書は、「アレクサンドロとルフォスの父でシモンというキレネ人」と記しています。たまたま通りがかった人にしては詳しすぎます。つまり、ただの通りがかりの人で終わらず、後に教会で福音書が記された時には、このシモンとその子供たちの名前までよく知られるようになっていたのです。あの時たまたま死刑囚の十字架を担がされたシモン。なぜかその後、あの忌まわしい死刑囚イエスを神の子・キリストと信じたのです。
 さらに、彼の妻も子供たちもキリストを信じ、どんないきさつがあったのか分かりませんが、息子ルフォスはパウロと出会い、シモンの妻もパウロを息子のように助けたのでしょう。それでパウロは「彼女はわたしにとっても母なのです」と言うのです。
 ここに、不思議にも神の家族が形成されています。彼らをつないだのは単なる偶然の出会いではなく、「主に結ばれた」者たちの関係でした。ルフォスの父シモンは、十字架の文字通りの重さを知っている唯一の人ですが、キリスト者は互いに十字架の恵みの重さと、主から与えられた使命の重さを知っているのです。
 ルフォスの父は無理矢理に十字架を担がされて、まさに強いられた恩寵を知った人でした。パウロが挨拶を送っている人々も、その多くは「主のために苦労した人」です。単なる苦労人ではなく、主の命の息吹(霊)が吹き込まれて、言わば主の息づかいを感じて喜んで生きている「聖なる者」です。
 キリスト者の挨拶は、誰とでも交わす挨拶ではなく、主のものとされた者同士の喜びの確認です。キリストの体なる教会の部分とされている私たちには、主の命の霊が注がれており、主ご自身が生きて働いて形成してくださってる主の霊の交わりです。そのように互いに共に主に結ばれている喜びを、この世にあって確かめ合うことができるのです。
 
 

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