ホーム | 説教 | 説教(2020年度) | 神に希望をかける者

神に希望をかける者

説教要旨(12月27日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 1:8-11
牧師 藤盛勇紀

 パウロはある経験を振り返って言います。「わたしたちが被った苦難について、ぜひ知っていてほしい」。自分の経験について語りたがらないパウロが「ぜひ知っていてほしい」とまで言う「苦難」とは何か。4節ではこう言いました、「神は、あらゆる苦難に際してわたしたちを慰めてくださる」。今日の箇所で、具体的な経験に基づいて、そのことを証しようとしているのです。
 神の恵みを証しようとする時、私たちは変な謙遜や尻込みをしてしまうことがあります。自分はまだまだ信仰者として経験が足りない、未熟のだなどと考えてしまうからでしょう。パウロはたしかに、常人は経験しない数々の苦難に遭いました。しかし、それを踏み台にしてこう乗り越え、こう克服したなどということを語るのではなく、むしろ、「わたしたちは耐えられないほどひどく圧迫されて、生きる望みさえ失ってしまいました」と告白します。苦難に遭っても希望を持ち続けたのでなく、「生きる望みさえ失ってしまった」。万策尽きて、希望も持てずに死を待つしかなかったのだと。
 その経験を。「ぜひ知っていてほしい」と言うのです。神の恵みが、まさに「恵み」なのだと知ってほしいからです。コリントの信徒への手紙一ではこうも言っています。「そちらに言ったとき、わたしは衰弱していて、恐れに取りつかれ、ひどく不安でした」。お前の信仰はどうした?と言われそうな弱音です。しかしそれが事実だった。
 ところが、これほどまでに弱って絶望の中にあった時、感謝すべきことに《神が》救い出してくださった。自分たちがどうしたわけでなく、自分たちの力や可能性でもない。それらが尽きてしまったところで、ただ神の恵みによって生かされた。この恵みを「知っていてほしい」と言うのです。
 パウロはその苦難の経験の中で、苦難を克服して強くなったのではなく、望みを失い、弱くなりました。「弱い時にこそ強い」という恵みを経験したのです。あの時は希望さえ失って、分からなかったけれども、恵みをいただいた後で分かった。それは、私が自分を頼る者でなく、神を頼りとする者とさせられるためだったのだ、ということなのです。
 ヘブライ人への手紙に、「主は愛する者を鍛え、子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである」「およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われる」とあります。
 鞭打たれるような辛い経験は、誰にでもあると思います。その時には、「クリスチャンなんだから喜んで苦難を受け入れる」とは、なかなか言えません。パウロでさえできなかった。むしろ「当座は喜ばしいものではなく、悲しいもの」と思われた。だから苦難なのです。その時は、「なぜ」こんな経験をするのかも分からないのです。
 パウロは言います。「神は、これほど大きな死の危険からわたしたちを救ってくださったし、また救ってくださることでしょう。これからも救ってくださるにちがいないと、わたしたちは神に希望をかけています」と。ここでは、「神に希望をかけている」と断言します。この希望は、パウロが自分たちの経験を肥やしにして勝ち取ったものではありません。苦難の中では分からなかったけれども、私たちの人生に計画を持っておられる神が生きてきておられる!という事実が言いたいのです。自分の経験を生かすとか、経験にものを言わせるのでなく、神に聞きつつ、神からいただきながら、生かされている事実です。
 だからパウロは、「あなたがたも祈りで援助してください」と求めるのです。あなたも、生きておられるあなたの神に祈ってください、「そうすれば、…わたしたちに与えられた恵みについて、…感謝をささげてくれるようになるのです」。こうして、神が生きておられることを知るからです。

説教一覧(2020年度)

2020.4.5
初めであり終わりである方
2020.4.12
主の言葉を思い出せ
2020.4.19
主を知って生きる
2020.4.26
どんな時も主を仰ぎ
2020.5.3
美しい足
2020.5.10
祭司の務め
2020.5.17
キリストの言葉を聞く
2020.5.24
私も日本人ですが
2020.5.31
永遠にあなた方と共に
2020.6.7
彼らの罪が世の富に
2020.6.14
新たに生まれる
2020.6.21
野生のオリーブ
2020.6.28
秘められた計画を知る
2020.7.5
神の富と知恵も深さ
2020.7.12
新しい時代のはじまり
2020.7.20
この世に倣わず
2020.7.26
信仰の度合いに応じて
2020.8.2
縦の愛、横の愛
2020.8.9
命のパンをいただく
2020.8.16
平和へのもう一歩
2020.8.23
自由の由来
2020.8.30
今という時を知る
2020.9.6
生きるにしても死ぬにしても
2020.9.13
神の国は義と平和と喜び
2020.9.20
隣人を喜ばそう
2020.9.27
敗北から
2020.10.4
希望の源
2020.10.11 朝礼拝
わたしがここにおります
2020.10.11 夕礼拝
門は開かれた
2020.10.18
私を用いて働く主
2020.10.25
終わりを目指して
2020.11.1
旅立つ者として生きる
2020.11.8
ふさわしい実を結べ
2020.11.15
主にある挨拶
2020.11.22
平和の源である神
2020.11.29
あなたを強める神
2020.12.6
慈愛に満ちた神
2020.12.13
神の御前に立つ者
2020.12.20
暗闇を照らす光
2020.12.27
神に希望をかける者
2021.1.3
私たちの誇り
2021.1.10
生き返り、見つかった
2021.1.17
『否』でなく『然り』のみ
2021.1.24
行き違いを越えて
2021.1.31
赦しと力
2021.2.7
勝利の行進
2021.2.14
主の導き
2021.2.21
あなた方はキリストの手紙
2021.2.28
文字は殺し、霊は生かす
2021.3.7
顔の覆いを取り除け
2021.3.14
雪のように白く
2021.3.21
神の輝きを見よ
2021.3.28
この土の器にも