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自立したと思うな

説教要旨(11月20日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 10:1-13
牧師 藤盛勇紀

 新約の時代から千数百年も昔の出エジプトの出来事とキリストが結び付けられています。、分かり難い話ですが、偶像礼拝の問題に触れていることは分かります。人は誰でも神を持っています。「私は無神論者」だと言う人がいますが、無神論はそう簡単なものではなく、甘いものでもありません。神無しに苦しみ、神無しに死ぬことは、極めて過酷なことです。
 パウロがまず取り上げるのは、エジプトから解放されたイスラエルが、シナイ山の麓で「金の子牛の象」を造って拝んだ事件です(出32章)。救いを経験しながら、いとも簡単に偶像礼拝に陥ったあの事件は、イスラエルにとって、決して記憶から拭い去ることができない痛恨の極みの出来事です。パウロは端的に言います。「偶像を礼拝してはいけない」。偶像礼拝は、神ではないものを神として崇める愚かであり、神の恵みを知った者にとっては、生きておられる方への裏切り、背信です。
 出エジプトの出来事はイスラエルにとって救いの原体験ですが、「金の子牛事件」は、その救いの経験と表裏一体、分かちがたく結びついています。彼らは主なる神の力を思い知り、その憐れみと恵みを味わい知りました。そして、自分たちがいかに不信実で愚かであるかをも思い知らされたのです。
 何の説明もなしに、イスラエルの体験と教会とが関係づけられています。神は昼は火の柱、夜は雲の柱をもってイスラエルを導き、紅海を割って、民を歩いて渡らせました。出エジプトの経験は、神の一方的な恵みの体験です。教会が行う洗礼も、一方的な救いの恵みをただ信じて受けるしるしであり、キリストの体である神の民に入れられることです。
 洗礼によってキリストに結ばれ、聖餐によって養われている者にとって、イスラエルの経験は原型、写し、モデルです。このモデルに対する実体が、キリストです。
 パウロがイスラエルの経験を思い起しているのは、あの民が神を侮り、神に信頼せずに背いたことを記憶したいからです。「これらの出来事は、わたしたちを戒める前例として起こった」。神の恵みと救いを知った民が、「悪をむさぼった」。「みだらなこと」もみな、偶像礼拝なのです。
 「試みた者は、蛇にかまれて滅びました」とは、有名な「青銅の蛇」の事件です(民21章)。イエスもこれに言及され、続いてあのお言葉を語られたのでした。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで永遠の命を得るためである」(ヨハネ3:16)。
 パウロはイスラエルの不信仰の例を並べますが、「それが書き伝えられているのは、時の終わりに直面しているわたしたちに警告するため」だと言います。「前例」とは、型・見本であり、本物を表す模型です。言わば、見て学ぶための視聴覚教材なのです。
 「時の終わり」とは、すでにキリストが来られた今、そしてキリストが再び来られる時に向かっている今です。キリストが再び来られることによって救いが完成されます。「だから」、パウロは勧告します。「立っていると思う者は、倒れないように気をつけるがよい」。神無しに人間は自立している、神などなくても、自分で生きていると思い上がっている人間への警告です。ひとたび厳しい試練に直面したり、不幸な出来事が降りかかると、人は皆、全く無視していた神を引っ張り出して、神は何をしている!神は無力だ!神は残酷だ!そもそも神などいない!とわめくのです。
 しかし、聖書は言います。「あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます」。
 試練の時、何とか逃れたいと必死になりますが、その時は、逃れる道を備える神の憐れみを知るチャンスなのです。「神は真実な方」と信頼するとき、逃れの道が見えます。真実な方を信頼して、見える道を行きましょう。
 

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