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私に触れてみよ

説教要旨(4月4日 イースター礼拝より)
ルカによる福音書 24:36-49
牧師 藤盛勇紀

 十字架で死んだイエスは、三日目に復活された。この復活信仰こそ、キリスト信仰の中核です。キリスト教は「十字架の宗教」とも言われます。神の御子の死によって私たちの罪は赦され、神との和解の道が開かれました。それは、復活のキリストとの出会いがなければ分からなかったのです。
 死者の復活など、いったい誰が信じ得るでしょうか。しかし事実、信じた者たちが起こされ、信じる者たちの群れ・教会が生まれ、今もなお「主は生きておられる」と宣べ伝えています。信仰とは、信じ得ない事実を確かめて生きていることです。
 聖書は、復活の可能性を説明したり証明しようとはしません。ただ、信じる者たちが生まれた次第を証言します。多くの人々の実体験なので、様々な角度からの証言が記されます。今日の場面も、すでに多くの証言者たちが集まって、主と出会った次第を語りあっていました。すると、主が現れて「あなたがたに平和があるように」と言われました。
 ところが、彼らは信じることができません。「亡霊を見ているのだと思った」。間抜けな話ですが、無理もありません。イエス様と出会った人たちは皆、恐れたり、慌てふためいたりして、信じられないのです。十二弟子の一人のトマスの疑いも有名です(ヨハネ20章)。「私はあの方の手に釘の跡を見て、この指をその釘跡に、この手をイエス様の脇腹に入れてみなければ、決して信じない」と言い張りました。そのトマスにもイエス様は現れて言われました。「あなたの指で、ここに触れてごらん」。
 今日の場面でも皆恐れ、おろおろし混乱しています。混乱し動揺するのは誰もが経験することですし、キリスト者も信仰が揺れ動き、曖昧になることがあります。あるいは「イエス・キリストを信じられるなら信じたい。信じたいのに、信じられない」という人もいるでしょう。
 大事なことは、信じた人々は例外なく、主の復活を証言する者たちの集まりの中にいたという事実です。パウロが言うように、キリストを宣べ伝える宣教は「愚か」です。十字架の言葉が愚かですし、信仰は「人から人へしか伝えられない」からです。しかし神は、そのまどろっこしい愚かな手段を用いて信じる者を起こし、キリストと出会わせ、新しい命に与らせることになさったのです。キリストを信じる人たちの中にいると、そこで主との出会いの証言を聞き、主ご自身のみ言葉を聞くことになります。今まさに私たちは証言を聞き、主のお言葉を聞いています。「なぜうろたえているのか。どうして心に疑いを起こすのか。うろたえなくていいんだよ、疑わなくていいんだよ」。
 なのに、なお彼らは信じられず、戸惑っています。「喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので」。不思議な言葉ですし、ちょっと滑稽なシーンです。端で見ていたらじれったくなるでしょう。イエス様もじれました。彼らが余りにも鈍いので、「ちょっと食べ物をよこせ。食べてやるから見てろ」と、ムシャムシャと食べられた。何だか必死になっているかのようです。これが、生きておられる私たちの主なのです。こんなことまでして、「信じよ、私だ」と言われます。あのトマスにもそうでしたが、「私に触ってごらん」と主が言われるのは、私たちが不信仰だからです。弱く鈍くかたくななことを、よくよくご存じだからです。そんな私たちを深く憐れんで、出会おうとしておられます。
 不信仰な者にも主は、「私を呼べ」と言われます。「私だ、信頼してごらん。私なんだよ」と呼びかけておられます。もしあなたが信じられないなら、自分で「主よ」と呼んでごらんなさい。「主よ、信じたいんです」と言ってごらんなさい。主はでくの坊ではありません。あなたが生きて呼ぶなら、必ず生きて応えてくださいます。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る